淡いピンクのチュールの下に、黒いローズレースが透ける。縁はレーザーカットで細く抜かれ、リボン状の布とボアが長いブーツのまわりを巡る。10月31日発売のgrounds × YUEQI QIは、バラを平らな柄として置かない。切り抜いた縁、重なる薄布、その下で足を支える厚いソールまで、花を1足の構造へ組み込んでいる。
花柄の縁を、切り取る
暖かなピンクの「MOOPIE x YUEQI QI 02」は、スプレープリントとレーザーカットによるローズレースを重ねたハイブーツだ。公式写真では、灰黒の花柄がシアー素材の奥に現れ、透ける面と隠れる面を行き来する。花の輪郭を1本の線で描くのではなく、透かしの小さな穴と布の重なりで見せている。
ブランドは、花を単なる装飾ではなく、一針ずつのステッチによって形づくられる構造として説明する。ローズレースも、伝統的なレースの図柄を精密に切り出し、幾層にも重ねることで刺繍のような厚みをつくるものだという。ここでバラらしさを支えるのは、花弁の色だけではない。縁がどこで切れ、次の層がどこから覗くかという距離である。
実在するバラの品種や花弁数を忠実に写した図鑑的な表現ではない。公式資料が示すのは、ローズレースという加工と、花をレイヤーで構築する考え方だ。だから見るべきなのも、何のバラかを当てることより、薄い素材が重なるたび、同じ模様の濃さと輪郭が変わるところにある。
薄いレースを、厚いソールが受け止める
MOOPIEの足元には、丸い塊が連なるような黒いアウトソールがある。高さは約7センチ。硬い台を細く見せるのではなく、ジェル状のものが膨らんだような量感を与え、その上にチュールとレースの軽さを置く。花の柔らかさと、身体を支える靴の重さが、上下で分かれながら1つにつながる。
もう1型の「JEWELRY x YUEQI QI 03」は、透明な球体を連ねた約5センチのソールに、白いレース模様のパーツとフリンジを合わせる。長いブーツが花の層を縦へ積むのに対し、こちらは足首のまわりでフリンジを横へ広げる。同じコラボレーションでも、花を高く包む形と、動きに合わせてほどける形に分かれる。
2足を価格や履き回しで並べるより、同じ「軽さ」が別の方法でつくられていることを見たい。MOOPIEでは透ける布が黒いソールの量感を軽くし、JEWELRYでは透明な球体が厚底の重さを視覚的にほどく。植物の像はアッパーにありながら、花をどう感じるかは、その下の支え方にも左右されている。
「ROSA」は、花園から始まっていない
この2足が初めて披露されたYUEQI QIの2026年秋冬コレクション「ROSA」は、2026年3月に東京・池袋で発表された。名前からバラ園を想像しやすいが、公式説明が出発点として挙げるのは、新潟にある地下空間「ROSA」だ。長い時間をかけて保たれてきた場所と静かな光。その感覚が、縫い目や層へゆっくり残る時間につながっている。
デザイナーのYueqi Qiはセントラル・セント・マーチンズでニットを学び、CHANELの刺繍アトリエで経験を積んだ後、2019年に自身のブランドを始めた。細かなビーズワークや手仕事を、身体とともに動く彫刻として捉えてきた背景を知ると、今回のローズレースも、花の絵を載せる作業ではなく、切る、重ねる、縫うという時間の集積として見えてくる。
ハイブーツは税込94,600円、アンクルブーツは税込68,200円で、いずれも22センチから30センチ。公式オンラインストアと直営店などで10月31日から展開される。購入先を急いで探す前に、写真の1足を上から下へ見たい。ローズレースの細い縁、チュールの空気、ボアの白、膨らんだ黒いソール。バラはそこに描かれているというより、異なる素材の間隔として立ち上がっている。
