花びらを思わせる薄いピンクのパーツが肩から胸へ重なり、その隣を白いジャケットと銀色のパンツが通り過ぎる。ディオールの2027年サマー コレクションで、花は布に描かれるだけでなく、服の厚みや靴底の輪郭になった。ジョナサン・アンダーソンがパリのチュイルリー庭園で見せたのは、庭の眺めを、そのままではない形で身体へ移す服だった。
花びらを重ねる、服をつくる
9月29日に発表されたコレクションの写真では、樹木の下を進む列の手前に、ピンクと白の花弁状のパーツを重ねた服がある。一枚ずつの縁が少し浮き、重なるところに影ができる。隣のジャケットの大きな襟や、滑らかなパンツの面と並ぶと、花の形が服の表面を細かく分けていることがよく分かる。
ここで気になるのは、何の花を模したのかという名前より、花びらが重なって生まれる厚みだ。平らな模様なら布と一緒に折れるが、表面に重ねたパーツには、それぞれの縁がある。写真の中でも、淡い色が一様な面にならず、小さな明暗として続いている。植物の形を借りることで、服を見る距離まで変わる。
ディオールがこのシーズンの素材として挙げるのは、レースやシルクモスリン、オーガンザ。透ける部分と透けない部分を行き来する軽さが、仕立てのはっきりした服と組み合わされる。花のボリュームは、2026–2027年秋冬から続く要素でもある。季節の柄を取り替えるというより、花の形をどこまで服の構造にできるか、その続きを見せている。
花の写真から、靴底の輪郭へ
同じ花でも、足元では別の扱いになる。「ディオール ボウ」のサンダルは、角ばったトウとブロックヒールに花の写真をプリント。一方、「ディオール シガール」の靴は、ソールそのものが花弁を思わせる形をとる。前者では植物の像が残り、後者では花の輪郭が靴の一部になる。花柄という一語では収まらない、二つの距離がある。
バッグにも、その差は続く。メッシュにフリンジ付きのシルクスカーフや薄いジョーゼットの花弁を合わせたものは、服の装飾と響き合う。網目の開いた部分と、花弁が重なる部分。鉢の花を正面から眺めるときとは違い、手に持つものでは、形の裏側や隙間も目に入る。植物を小さく写すだけでなく、その見え方を組み替えた小物になっている。
花だけでなく、実の形も登場する。銀色の仕上げを施した小さなミノディエールのもとになったのは、中国で手の中で転がして楽しむ文玩胡桃というクルミだ。招待状にも添えられたその実を、バッグの形へ置き換えている。花弁の薄さから、手で包む実の凹凸へ。植物の異なる部分が、身につけるものの大きさと触れ方を変えていく。
樹木のそばで見る花の服
会場はチュイルリー庭園の八角形の池、バッサン・オクトゴナル。ディオールの会場案内によれば、客席は池の周囲に置かれた。ここも前の秋冬コレクションから引き継がれた場所だ。発表写真には、白い通路のそばに立つ樹木と低く漂う霧が写り、服の列の向こうまで緑が続いている。
その写真を見返すと、樹木の緑と服の花が、同じ役割を与えられていないことに気づく。葉の集まりは大きな面となって奥行きをつくり、手前の花弁は、肩や胸の小さな起伏をつくる。庭をそっくり着るのではなく、大きさや素材を変えながら、植物の一部分だけを身体の近くへ引き寄せている。
花の名前を知る楽しさとは別に、一枚の縁、重なった影、実の表面を眺める楽しさがある。ディオールの2027年夏では、その観察が服や小物の形として返ってくる。庭園の木々が列の後ろに残るなか、花びらの輪郭だけが、着る人と一緒に歩いていく。
