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四つの学名が歩き出す CAMPER「Floratopia」

2026年秋冬のTWINSに、チューリップ、ユリ、ヒナギク、キンポウゲの学名を添えた。大阪髙島屋では9月15日まで、植物学とファッションが交わる期間限定店が開かれている。

白い壁の部屋に標本瓶と古書が並び、靴から描かれた茎が床を這う。CAMPERの2026年秋冬キャンペーン「Floratopia」は、花柄を表面へ置くだけではなく、靴を観察し分類する架空の植物学へ仕立てた。9月2日に始まったコレクションでは、左右を揃えないTWINSと四つの学名が出会い、植物の違いが足元の違いに変わる。

花のイラストが伸びる室内で、エマ・ポートナーが花柄の黒い靴を履いて椅子にもたれるCAMPER 2026年秋冬キャンペーン
写真提供:CAMPER 撮影:Blommers & Schumm イラスト:Erik Winkowski

ダンサーのエマ・ポートナーとトゥーン・ロバッハが身を置くのは、植物標本集を意味するハーバリウムやガラスのベルジャーが並ぶ学術室のようなセットだ。撮影はアムステルダムを拠点とするブロマーズ&シュム。エリック・ウィンコウスキーが描いた花は、壁に掛けられた標本ではなく、黒い革靴の先から部屋へ伸びていく。

キャンペーン名は、植物相を意味するFloraと、場所を示す接尾辞-topiaを組み合わせたもの。CAMPERはこの架空の場所を「Camperium」と呼び、靴を標本のように並べる。1988年に始まったTWINSの左右非対称という考え方が、花の形や一株ごとの差を受け止める器になった。

四つの学名が 靴の輪郭を変える

公式のデジタルキャンペーンには、Tulipa gesneriana、Lilium candidum、Bellis perennis、Ranunculus acrisの名が並ぶ。キュー王立植物園のPlants of the World Onlineでも、いずれも現在受容されている学名として扱われている。チューリップとユリはユリ科、ヒナギクはキク科、キンポウゲはキンポウゲ科。ひとまとめの「花柄」ではなく、属も科も異なる植物が選ばれた。

Casi Myraにはパーロット咲きのチューリップを思わせる揺れる輪郭、Deanには白いユリ、PelotasとRunner Twentyfiveにはヒナギク、Right Leftにはキンポウゲが対応する。植物の特徴を靴の機能へそのまま置き換えた図鑑ではない。低く構える形、革の線、左右の違いに、植物名から連想した性格を重ねたデザインノートに近い。

四つの植物は、花の大きさも生え方も異なる。Tulipa gesnerianaとLilium candidumは地下に球根を持ち、Bellis perennisは地際に葉を広げる多年草、Ranunculus acrisは掌状に裂けた葉と枝分かれする茎を持つ。キャンペーンの一足ずつを眺めると、刺繍の位置や線の高さにも、花を選び分けた理由が浮かぶ。

青いキンポウゲは 意図されたずれ

とりわけ面白いのはRanunculus acrisだ。英国王立園芸協会は、この多年草の花を光沢のある黄金色と記載する。一方、CAMPERはRight Leftに結び付けた青いキンポウゲを、植物学上の「anomaly」と自ら呼んでいる。実在する花色を忠実に写したのではなく、あり得ない青を異質さの印として選んだことが分かる。

バレリーナシューズとヒールの間にあるRight Leftも、一つの型へ収まらない存在だ。学名は正確さの記号として置かれながら、色はそこから意識的にはみ出す。標本室の規則と、描かれた花の自由さ。その距離が、今回の植物表現を単なるボタニカルプリントから遠ざけている。

標本の静けさから 花が歩き出す

実際の標本は、植物を押し葉にし、採集地や日付、名称とともに保存する。Floratopiaが借りたのは、その保存方法ではなく、細部へ名前を与えて観察する姿勢だ。左右が異なる靴を一足として眺めるとき、花弁の向きや茎の曲がり、刺繍とプリントの差まで視線が近づく。

ただし、キャンペーン上の説明を植物図鑑として受け取る必要はない。パーロットチューリップという園芸的な姿とTulipa gesnerianaの名、青く描かれたRanunculus acrisの間には、意図的な創作がある。植物学を装飾的な権威として借りるだけでなく、その正確さから逸脱する瞬間まで見せたことに、CAMPERらしい遊びが残る。

難波では 9月15日まで

2026年秋冬コレクションは9月2日から世界のCAMPER店舗、公式オンラインストア、取扱店で発売された。大阪髙島屋2階のPOP UP STATIONでは、同日から9月15日までFloratopiaの期間限定店が開かれている。公式案内によれば、花を取り入れた新作に加え、シューズとバッグを揃える。

植物をまとう服や靴は、しばしば花の美しさだけを切り取る。Floratopiaでは、学名、分類、標本、異常という少し硬い言葉までが、左右違いの一足を支えている。足元に残るのは花束の華やかさだけではない。一つずつ名を持ち、同じ形には育たない植物を観察する時間である。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. CAMPER 2026秋冬コレクションとキャンペーンヴィジュアル『Floratopia』を発表 — 株式会社カンペールジャパン
  2. Floratopia | F/W 2026 Collection — Camper
  3. CAMPER POP UP SHOP — 大阪髙島屋
  4. Tulipa gesneriana L. — Plants of the World Online, Royal Botanic Gardens, Kew
  5. Lilium candidum L. — Plants of the World Online, Royal Botanic Gardens, Kew
  6. Bellis perennis L. — Plants of the World Online, Royal Botanic Gardens, Kew
  7. Ranunculus acris L. — Plants of the World Online, Royal Botanic Gardens, Kew
  8. Ranunculus acris | meadow buttercup — Royal Horticultural Society
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