公式写真では、黒い袖の上に幅のある銀のバングルが重なり、その下から細い葉のようなパーツが垂れている。両手で顔を覆う姿勢によって、ジュエリーは手首の飾りだけではなく、指輪、肌、服をつなぐ一つの線として現れる。葉の正面図を見せない写真だからこそ、銀の面よりも、パーツの間からのぞく白い背景が先に形をつくる。
BLANC IRISは9月4日、2026年秋冬コレクションを発売した。パリで撮影されたルックには、植物を着想源とする「OMBRE VERTE」のほか、曲線を重ねた「CINEMA」、小さな石を連ねる「POINTILLISTE」などが並ぶ。葉を選んだ一群だけを切り離しても、今季の線と量感の対比が見えてくる。ブランドは2012年にパリで始まり、デザインを日本とイタリアの工房の技術へつないできた。植物の観察も、写生のままではなく金属加工の言葉へ置き換えられる。
葉を写さず 穴と輪郭を残す
モンステラ属の葉は一様ではない。英国王立植物園キューのデータベースは、この属の葉について、通常は穴が開く、深く切れ込む、またはその両方と記す。メキシコから熱帯アメリカに自生する、登る性質をもつ植物群でもある。「OMBRE VERTE」は特定種の標本ではなく、その複雑な外形と影を抽象化したシリーズだ。属の特徴とデザインの見立てを分けることで、ジュエリーの形を植物名だけで説明しきらずに済む。
シルバーの面を葉の形に切り抜くだけなら、植物は一つの記号に留まる。このシリーズでは、丸みを帯びた面と空洞のある輪郭を別々のパーツにし、左右をそろえずに連ねる。金属がある場所とない場所が交互に現れ、葉の穴が空間そのものとして残る。服の黒が穴を満たせば輪郭は強くなり、素肌や白い背景が入れば軽くなる。同じ品でも、下に置かれる色が造形の一部になる。
公式商品ページのネックレスはスターリングシルバー製で、税込132,000円、全長46センチ、モチーフは約2×1.8センチ。ピアスは税込55,000円、全長5.6センチで、異なる大きさのモチーフを組み合わせる。寸法が小さくなっても、滑らかな面と細い輪郭の差は消えない。数値は大きさを確かめる手掛かりであり、着けたときの見え方は首や耳との比率で変わる。
静止した植物が 手の動きで影を変える
モンステラはつる性の植物で、葉は一枚の面として広がる。一方、ジュエリーは首、耳、手首という可動部に置かれる。「OMBRE VERTE」の分かれたパーツは、腕を上げる、顔を向ける、歩くといった小さな動きのたびに角度を変え、銀の反射と肌へ落ちる影を組み替える。葉が光を受けて見せる表裏の変化を、金属の可動部が別の方法で引き受ける。
メイン写真のブレスレットは税込99,000円。幅のある本体は手首に固定され、細いモチーフだけが下へ揺れる。動かない面と動く線を一つに置いたことで、葉を見立てた装飾よりも、植物の影が風でほどける瞬間に近い。
シリーズ名はフランス語で「緑の影」を意味する。けれども、使われる色は銀一色だ。緑を再現しないため、植物らしさは色ではなく、輪郭、穴、重なり、揺れへ託される。自然物を身につけるのではなく、見たときに残る構造を身につける選択になっている。
白黒の写真が 銀の面を近づける
2026年秋冬ルックは、写真家MAXIME SEVEがパリで撮影し、SAUVAGE111がアートディレクションを担った。白黒の画面では、葉の緑も肌の色も消え、光を返す銀、黒い服、白い背景の明暗だけが残る。植物を出さずに、その影から生まれた形を読むための距離がつくられている。商品写真の正確さとは別に、ルックは身につけた後の視線の動きを設計している。
手で顔を覆うポーズも、人物を匿名化するだけではない。指の隙間、リングの輪、ブレスレットの空洞が縦に重なり、人の身体にも複数の余白があると示す。植物の穴を写したはずの形が、着用すると手の形を見直す枠へ変わる。
店の緑と オンラインの白い画面で選ぶ
コレクションは公式オンラインストアと各店舗で扱われる。価格や在庫は型ごとに異なるため、目当ての品がある場合は商品ページと店舗案内の最新表示を確かめたい。画面では輪郭を拡大でき、店頭では重さ、揺れ、肌へ落ちる影まで確かめられる。モンステラらしさを名前から探すのか、身につけたときの空間から探すのかで、選ぶ型も変わる。
葉をそのまま小さくするのではなく、何が葉を葉らしく見せるのかを分解する。そこに「OMBRE VERTE」の植物性がある。銀の面より、抜けた空間が先に目へ入るとき、モンステラは図柄ではなく、身体の周りで変わり続ける影になっている。
