Culture

タマネギの皮を、秋色のバッグへ。紀ノ国屋「ONIBEGIE」ミニボストン

捨てられる外皮の成分を、ワイン、カラシ、ベージュ、ネイビーの発色へ。植物由来の色と合成繊維が出会う小さなバッグ

白い壁の前に、カラシ、ワイン、ベージュの小さなバッグが並び、手元には深いネイビーが下がる。この四色の出発点の一つは、捨てられるタマネギの外皮だ。紀ノ国屋が「ONIBEGIE」を使ったミニボストンを8月12日から順次発売する。植物の色をそのまま写すのではなく、合成繊維の発色へ移す素材の仕事が、夏と秋のあいだのバッグを染める。

白い壁の前にカラシ、ワイン、ベージュのミニボストンが並び、黒いパンツ姿の人物がネイビーのバッグを手に持つ
写真提供:株式会社紀ノ國屋(PR TIMES掲載資料)

冒頭の写真で目に入るのは、四つの色と一つの形だ。カラシ、ワイン、ベージュ、ネイビー。黒い持ち手とテープが柔らかな発色を引き締め、横長の輪郭をつくる。花柄も葉の刺繍もない。それでも、このバッグには植物が意匠より深いところで入っている。

外皮の色を、そのまま移さない

本体に使われる「ONIBEGIE(オニベジ)」は、小松マテーレが開発した天然成分配合の合繊素材だ。公式説明では、タマネギの皮から抽出した成分をベースに、さまざまな植物由来成分を活用して合成繊維を染める。今回のバッグはナイロン100%。天然繊維を草木染めした品ではなく、植物由来の成分と合成繊維を一枚の生地の中で出会わせたものだ。

鍵になるのは、外皮に含まれるケルセチンという成分である。小松マテーレの開発記録によれば、合繊へ天然成分を定着させる試行のなかで、タマネギの外皮がほかの植物由来色素を使う際にも土台になることが分かった。オリーブの葉や搾りかす、ワインやブドウの搾りかす、米のもみ殻、竹炭などへ色の幅を広げても、タマネギ由来成分が支えになるという。

ただし、今回の四色を特定の植物へ一対一で結びつける情報は公開されていない。ワイン色だからブドウ、ネイビーだからインディゴ、と写真だけで決めることはできない。確かに言えるのは、タマネギの外皮由来成分を基礎に、ほかの天然色素を独自に配合した素材であること。その範囲を守ると、色は原料の絵解きではなく、技術と配色を一緒に見る入口になる。

黄色ではなく、四色を持ち歩く

タマネギの皮と聞けば、最初に浮かぶのは黄褐色かもしれない。けれど、ミニボストンが選んだのは四色だ。カラシは夏の白い服に明るい面をつくり、ワインは秋の茶やグレーへ深さを足す。ベージュは素材の陰影を近くで見せ、ネイビーは黒より少しだけ青を残す。季節を限定せず、隣に置く服で表情が変わる構成になっている。

ここで植物は、目立つモチーフではなく、色を決める過程にいる。葉や花を表面へ描けば、植物との関係はひと目で伝わる。一方、外皮の成分を染色へ使う場合、植物は説明を読んで初めて見えてくる。派手な記号を置かず、素材の由来を知ることで見え方が変わる。その遅れて届く感覚が、このバッグの面白さだ。

小松マテーレは、社員食堂で白い長靴に付いた野菜の色が落ちにくいという一言を、開発のきっかけとして紹介している。日々捨てられる皮と、仕事場で偶然目にした色残り。素材開発の入口が研究室の外にもあったことは、完成品の見方を少し変える。色は選ぶものだけでなく、暮らしの中で発見されるものでもある。

一枚の生地から、持てる立体へ

形にも小さな工夫がある。公式案内では、一枚の生地を折り紙のように折りたたみ、奥行きのあるボストン型へ仕上げたという。寸法は約幅23センチ、高さ14センチ、まち14センチ。約149グラムで、500ミリリットルのペットボトルも収められる。数字だけを見ると小さいが、まちを高さと同じだけ取ることで、横から見たときの厚みが生まれる。

持ち手は約32センチ。本体のナイロンに対し、テープ部分には再生ポリエステル83%と通常のポリエステル17%が使われ、ファスナーのテープも再生ポリエステルとされる。植物由来成分だけで全体ができているわけではない。複数の素材が一つのバッグを成立させていることまで見ると、環境への配慮を単純な印象語で終わらせずに済む。

編集部が注目したいのは、植物の利用を大きな物語にしすぎないところだ。タマネギの外皮は色の土台になるが、バッグの耐久や使い心地を決める要素はほかにもある。植物、ナイロン、再生素材、縫製、折りの構造。それぞれの役割を分けて見れば、素材の由来は商品の価値を飾る言葉ではなく、選ぶための具体になる。

8月12日、夏の服に秋色を足す

公式オンラインストアでは8月12日20時から、店舗では13日から順次販売予定。価格は各色4,950円(税込)だ。取扱店は青山、鎌倉、京都、福岡、神戸、横浜、日本橋、渋谷、立川、上野、京都・京町家の各店が案内されている。物流や天候で開始が遅れる場合があり、数量限定のため、訪れる前に最新の在庫を確かめたい。

夏の終わりに服をすべて替えなくても、手に持つ色を一つ変えれば景色は動く。カラシか、ワインか、ベージュか、ネイビーか。その選択の奥に、捨てられる外皮と合繊染色の技術がある。植物を身につけることは、いつも花や葉を描くことではない。色がどこから来たのかを知り、服との距離を選ぶことでもある。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. 天然色素由来の4色を楽しむ『ミニボストン』 — 株式会社紀ノ國屋 / PR TIMES
  2. 紀ノ国屋 ミニボストン — 紀ノ国屋公式オンラインストア
  3. 天然成分配合ファブリック『Onibegie』 — 小松マテーレ株式会社
  4. ONIBEGIEポリエステル展開の公式発表 — 小松マテーレ株式会社 / PR TIMES
  5. PR TIMES 利用規約 — 株式会社PR TIMES

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