Culture

植物は、いつからマンガの主役になったのか

1950年代の学習マンガから標本、研究者、現代のエッセイへ 筑波実験植物園でたどる描かれ方の変化

根から水を吸い、葉で光を受け、花を咲かせる。植物の仕組みを順番に説明する学習マンガは、目の前ではゆっくり進む生長を、ページの中で見える時間へ変えてきた。11月14日に筑波実験植物園で始まる「学習マンガがえがく植物の世界」は、1950年代ごろの理科学習から、標本、研究者の伝記、現在のエッセイや娯楽作品までをたどる。植物は知識の題材から、いつ、どのように物語の主役になったのだろう。

桃色の背景に、葉を描いた学習マンガや植物のエッセイ、研究者の伝記などの表紙を格子状に配した企画展の公式ちらし。
画像提供:国立科学博物館 筑波実験植物園/文化庁(PR TIMES配布資料)

根から水を吸い、葉で光を受け、花を咲かせる。植物の仕組みを順番に説明する学習マンガは、目の前ではゆっくり進む生長を、ページの中で見える時間へ変えてきた。11月14日に筑波実験植物園で始まる「学習マンガがえがく植物の世界」は、1950年代ごろの理科学習から、標本、研究者の伝記、現在のエッセイや娯楽作品までをたどる。植物は知識の題材から、いつ、どのように物語の主役になったのだろう。

見えにくい時間を、コマの間に置く

展示が最初に扱うのは、植物学習マンガの変化だ。初期には作物の育て方や園芸など、暮らしと結びつく内容が多く、1970年代以降は植物の構造や生理を扱う基礎科学の比重が増えた。近年は、生態や環境、人間社会との関係まで視野を広げ、答えを渡すだけでなく、子どもの「なぜ」を引き出す構成へ変わっているという。

植物は動物のように大きな身振りをしない。発芽、伸長、開花、結実は確かに動きながら、その一部しか同時には見えない。マンガは時間の異なる場面を隣り合わせに置き、断面図や拡大図、言葉を加えることで、その変化をひと続きの動きとして読ませる。展示では、何が正しく描かれているかだけでなく、見えにくい過程をどんな順序で渡してきたかにも目を向けたい。

同じ葉でも、農作物として育てるページ、形を比べる理科のページ、生態系の一員として描くページでは役割が違う。ページをめくる順序は、植物を見る順序でもある。名前を知り、形を見て、暮らしとの関係へ進むのか。あるいは先に小さな疑問が置かれ、観察から答えへ近づくのか。その設計の変化に、学び方の時代差が残る。

押し葉の前後を、物語にする

2つ目の軸は、植物学を支えた研究者とマンガである。採集した植物を押し、ラベルを添え、さく葉標本として保存するまでを本格的に説明した作品に加え、牧野富太郎や南方熊楠を描いた伝記マンガが実物で紹介される。完成した標本だけを見せるのではなく、その前にどこで採り、何を記し、どのように残したかを、行為の連なりとして渡す。

RareDexでは以前、牧野富太郎の標本ラベルを、植物のそばに日付と場所を残す小さな記録として読んだ。今回の主題は、その人物や1枚のラベルを再び説明することではない。採集から保存までの工程が、マンガのコマによってどのように学びの入口へ変わるかを見ることにある。標本の静けさと、手を動かす場面の連続。その距離を行き来できるのが、マンガという媒体の強さだ。

研究者の伝記も、発見だけを劇的に切り取れば植物が背景へ退いてしまう。どの土地で、どの季節に、どの個体を見たのか。学名や分類が確定する前の迷いをどう描くのか。実物の書籍を前にしたら、人物の表情と同じくらい、葉の形、採集道具、ラベルの文字がどの密度で置かれているかを確かめたい。

植物が、説明される側から歩き出す

最後の軸では、植物を主題にした近年のエッセイや娯楽マンガが並ぶ。植物は身近でありながら、長くマンガの主役になることは多くなかったと主催者は説明する。育てる人の失敗、街角で見つけた1株、植物園を歩く時間が物語になるとき、植物は知識を受け取るための図から、読み手の生活に入り込む存在へ変わる。

12月5日には、コミックエッセイ「植物園の歩き方」の著者カシワイと、筑波実験植物園の研究員による対談も予定される。募集開始は11月5日、定員は50人。作品名を集めるだけでなく、植物園の歩き方そのものをマンガがどう変えられるかを、描き手と研究者の間で考える機会になる。

会期は2027年1月17日まで、会場は園内の教育棟。実物の書籍とパネルを見比べるとき、説明の量だけを比べない。1枚の葉が、ある本では構造図になり、別の本では標本になり、さらに別の本では誰かの暮らしを動かす。植物は同じ場所に立ちながら、描かれ方によって読む時間を変えてきた。その変化をたどった後なら、温室の1枚の葉も、少し違う順序で見えてくる。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. みごろ・イベント — 国立科学博物館 筑波実験植物園
  2. PR TIMES 利用規約 — 株式会社PR TIMES
  3. ミニ企画展「学習マンガがえがく植物の世界」開催および報道内覧会のご案内 — 文化庁/国立科学博物館 筑波実験植物園

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