地面の下にできるものを、私たちはひとまとめに「イモ」と呼ぶ。けれど、葉を広げる姿も、育つ場所も、収穫される形も一つではない。筑波実験植物園では2026年9月19日から27日まで、サツマイモ、ジャガイモ、コンニャク、オカなど約50品種を、生きた植物として見せる企画展が開かれる。
約50品種を 生きた姿で比べる
企画展「植物園フェスタ―大集合!いろんなイモ―」は、教育棟、多目的温室、熱帯雨林温室一階、園内の野菜コーナーが舞台。収穫された姿だけでなく、葉や茎を含めた生きた植物に出会える。いつもの食材がどんな葉を広げるのか、温室や畑を巡る楽しみが待っている。
教育棟では、サツマイモが世界へ広まった歴史と、人の暮らしとの関わりを紹介する。農研機構九州沖縄農業研究センターが開発してきた品種も約20種類が集合。食品色素としての利用にも触れる展示は、味わいだけではないサツマイモの魅力を教えてくれる。
多目的温室に並ぶのは、サツマイモやジャガイモ、コンニャクに、アンデスのオカ、チョロギなど。葉を眺めて楽しむ観賞用サツマイモも含まれる。葉の形や茎の伸び方に目を向けると、食卓での印象とは異なる姿に出会えそうだ。
オカの色と形に出会う
記事の写真は、オカ(Oxalis tuberosa)の塊茎を写したものだ。淡い黄色の細長い塊茎が重なり、ところどころに赤みが差す。表面には、節のようなふくらみが続く。筑波実験植物園の案内は、オカをアンデスのイモとして紹介し、多目的温室で生きた植物を観察できると記す。
写真はCeseonicoが2020年9月に撮影したオカで、今回の展示物とは異なる。食卓では収穫された姿に出会うことが多いイモも、温室では葉や茎を含む生きた姿に近づける。
オカの色や形を眺めた後は、温室に育つ葉や茎にも目を向けたい。収穫後の姿と生育中の姿がつながると、見慣れないイモにも一株の植物としての表情が生まれる。
畑と温室をつなぐ 四つの場所
園内の野菜コーナーには、コンニャクやアピオス、「宇宙イモ」などが育つ。9月21日、22日、27日には、サツマイモを掘り上げて形を観察する展示案内も予定されている。土から現れるイモのつき方を、間近で確かめられる機会だ。
熱帯雨林温室では、植物園が維持管理するコンニャクの仲間や、ショクダイオオコンニャクの植物体が展示される。公式案内によると、花は見られない場合もある。開花の瞬間とは異なる、生育中の姿にも注目したい。
食べるための品種も、葉を眺めるための品種もある。観賞用サツマイモの展示は、イモの仲間を庭や鉢で楽しむ植物として親しむきっかけにもなりそうだ。
食卓の名前から 植物の全身へ
会期は9日間で、休園日はない。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料と案内されている。展示解説や講座には予約が必要なもの、先着順のものがあるため、訪問前に公式ページで時刻と受付状況を確かめたい。花の状態も当日の生育に左右される。
会場では、食卓でなじみのあるイモと、初めて出会うイモが隣り合う。収穫する部分だけでなく、葉のつき方や茎の伸び方にも違いがある。気に入った植物の名前を一つ持ち帰るだけでも、次に売り場へ立つ楽しみが増えそうだ。
サツマイモとジャガイモ、コンニャクとオカ。同じ「イモ」という呼び名の先にある、さまざまな葉と茎。秋の植物園で過ごすひとときが、いつもの食卓に並ぶものを少し身近にしてくれそうだ。
