会期は9月5日から10月9日まで。舞台は赤城山の南麓、群馬県前橋市のぐんまフラワーパークプラスだ。園内全体には10万株を超えるコスモスが植えられ、メインフラワーガーデンには約2万株で構成する「コスモスオータムブーケガーデン」が初めて現れる。コスモスだけでなく、ジニア、ケイトウ、大輪のアフリカンマリーゴールドが加わり、同じ季節を異なる高さと花形で見せる。
この庭の主役は、花の総数だけではない。青、オレンジ、黄、赤という四つのコンセプトカラーに沿って区域を巡ると、見る人の中に一束の構図が残るよう設計されている。切り花を束ねる前に、足で色を選ぶ。花壇を一枚の景色として受け取るのではなく、色から色へ移る時間まで作品に含める方法だ。
四つの色を 順番に身につける
青の区域からオレンジへ進むのか、赤から黄へ戻るのか。歩く順番が変われば、記憶の中の花束も変わる。細い花弁を広げるコスモス、面で色を見せるジニア、縦に立つケイトウ、球形にまとまるマリーゴールド。色だけでなく、線、面、高さ、量感を重ねる点では、服や装身具を選ぶときのレイヤリングにも近い。
ただし、ここで完成する花束は持ち帰る物ではない。公式案内が示すのは、四つの区域を巡ることで心の中に花束ができるという構想だ。だから、まずは一つの花を近くで見て、次の区域へ移る前に色の残像を確かめたい。広い花畑ほど、全景を急いで撮るより、異なる花形が同じ色の中でどう並ぶかを追うと設計が見えやすい。
見る庭から 摘んで持ち帰る庭へ
9月中旬からは、開花状況に応じてコスモスの花摘み体験が始まる予定だ。自分で摘んだ花を専用ボトルに入れて持ち帰る。メインガーデンを巡って心の中に組んだ花束と、手の中に残る数本の花は同じではない。その差が、園内で見た色を家へどう運ぶかを考えさせる。開始日は花の状態で決まるため、参加前には公式サイトの最新案内を確認したい。
ぐんまフラワーパークプラスは、2025年秋のリニューアルで「Enjoy!花とあそぶ」を掲げ、鑑賞だけでなく、触れる、つくる、香る、食べるといった体験へ園の役割を広げた。施設が説明するネイチャーポジティブも、自然を遠くから守る理念にとどめず、遊びながら触れた感覚を日常へ持ち帰ることを重視する。今回の花摘みは、その考えを最も小さな単位で示す。
花畑に 絵とリズムを重ねる
9月12日から23日までは「ART & CULTURE WEEK」。9月20日と21日には、絵本とアートのマルシェ、世界の太鼓を輪になって鳴らす参加型ドラムサークルが開かれる。20日には、画家の上原菜摘による来園者参加のお絵描きとライブペイントも予定されている。花壇を背景に演目を置くのではなく、見る人が線や音を加えることで、その日の庭を一度だけの場に変える。
ドラムサークルは、客席から完成した演奏を聴く形式ではない。小さな子どもから高齢者までが輪に入り、それぞれの打音を一つの流れへ重ねる。風で揺れるコスモスの反復と、人の手がつくる不揃いなリズム。二つが同じ場所で進むことで、花畑は静止した背景ではなく、時間を共有する装置になる。雨天時は会場がアトリウムへ移る。
一輪の花から 手紙へつなぐ
9月26日と27日には、日本に1台と案内される投函機能付きの「ポストカー」が来園する。園内で摘んだ一輪の花に手紙を添える体験も用意される。花を保存するのではなく、その日に選んだ一輪を言葉と一緒に誰かへ送る。四つの区域から始まった色の記憶が、摘むこと、書くこと、届けることへ順に縮小されていく。
開園時間は通常9時から17時で、最終入園は16時30分。火曜休園だが、9月22日は開園し、24日が休園となる。期間中の入園料は大人900円、小中学生300円、未就学児無料。9月21日は写真付き身分証で年齢を確認できる65歳以上が無料になる。個別プログラムには日程、定員、料金、雨天時の変更があるため、目当てを決めたら来園前に公式案内を見直したい。
秋の庭を一度に所有することはできない。けれど、青から赤までを歩いた順番、手で選んだ一輪、輪の中で鳴らした一音、誰かへ書いた一文は持ち帰れる。ぐんまフラワーパークプラスがつくるのは、花の多さを記録するためだけの景色ではなく、見る人の行動によって小さく編集される庭だ。心の中の花束は、園を出たあとに日常の輪郭を少しだけ変える。
