Culture

樹形に 鉢という輪郭を THE MINO「鉢合わせ」

9月8日まで伊勢丹新宿店で開催。桃松園の盆栽と美濃の陶芸家15人の鉢が、調和と衝突の二つの方法で出会う。

白い壁の前で、幹は低く身を返し、濃い緑の枝が長方形の鉢の外へ伸びる。その隣では、一人のつくり手が枝先へ手を添える。THE MINO「鉢合わせ」は、桃松園の樹と美濃の陶芸家15人による鉢を、完成済みの組み合わせとして見るだけの場ではない。樹形の余白、高さ、土の表情を読みながら、一樹と一鉢の関係を店頭で選び直せる展示販売である。

左に低く横へ幹を伸ばす長方形鉢の盆栽、右に大きな樹の下で盆栽へ手を添える人物を配した二分割写真
写真提供:THE MINO(桃松園 盆栽、PR TIMES配布素材、無改変)

会場は伊勢丹新宿店本館5階のセンターパーク/ザ・ステージ#5。会期は9月5日から8日までだ。盆栽を手がけるのは、笠井武広が率いる桃松園。2025年末の代官山で、THE MINOを企画する井澤秀哉と笠井が出会い、樹と鉢の取り合わせを意味する「鉢合わせ」という言葉が企画の核になった。日常語では偶然の遭遇を指す言葉が、ここでは選び取る関係へ反転する。

笠井は1993年に山梨県で生まれ、重量挙げ選手を経て、植物の栽培と盆栽に向かった。2023年の競技引退後は桃松園を立ち上げ、埼玉と山梨を拠点に、真柏や黒松などの樹へ手を入れている。異なる身体感覚から盆栽へ移った経歴も、古い型を守るだけではなく、いまの空間に樹を置き直すこの企画と重なる。

長方形の余白と 高さを樹形に合わせる

鉢合わせは、鉢を樹の付属品として隠すことではない。笠井は伊勢丹のインタビューで、その関係を服のコーディネートに近いものとして説明している。横へ枝を流す樹なら、長方形の鉢に余白を残して置く。幹や枝が下へ垂れる懸崖のような樹形には、高さのある鉢を合わせる。輪郭を受け止める器が変われば、同じ樹でも視線が動く方向は変わる。

大切なのは、樹と鉢の色や形を似せることだけではない。横幅、高さ、土の見える面積、枝先までの空間が一つの構図になる。公式写真の盆栽では、鉢の左右に残る余白が、低く横へ伸びる幹の動きを止めずに受ける。鉢の縁は小さな台座でありながら、樹のスケールを測る水平線にも見える。

会場では、あらかじめ組まれた作品を見るだけでなく、樹と鉢をそれぞれ選べる。どちらから先に決めても、スタッフへ相談しながら組み合わせを探せるという。植え替えの適期は樹種や状態で異なるため、購入時に無理に一つへ収める必要はない。展示は、完成形を急ぐより先に、樹の次の輪郭を想像する時間をつくる。

15人の土が 調和と衝突に分かれる

参加作家の方法は一つではない。幸兵衛窯八代目の加藤亮太郎は、半球をわずかに崩した織部の鉢を登り窯で焼き、植物より前へ出るのではなく、樹と並んだときの調和を考える。一方、宮下将太は多肉植物やサボテンの鉢づくりから入り、強い釉薬や色をもつ鉢を樹へぶつける。静かに受ける鉢と、異なる性質を持ち込む鉢。その両方が、鉢合わせという動詞を立体的にする。

宮下は土岐市を拠点に、結晶釉を中心とする独自の釉薬を研究してきた。自身の公式サイトでは、原料を0.001グラム単位で調合し、焼成を1度単位で管理すると記す。数字の精密さは、仕上がりを均一にするためだけではない。釉薬が結晶へ変わる条件を狭く制御することで、樹皮や葉とは別種の時間を鉢の表面へ置く。

日置哲也は、カネ利陶料で粘土づくりに携わりながら作陶する。会場の作品では、美濃の複数の土を合わせ、採掘場の地面を思わせる亀裂と塊の表情を残した。滑らかな器に樹を載せるのではなく、根の下にも地層が続いているように見せる方法だ。鉢が背景へ退かないからこそ、樹と土の距離が目に見える。

美濃の土を 一つの産地名で終わらせない

美濃には木節粘土、蛙目粘土、もぐさ土など、性質の異なる土がある。MINO SOILは、採掘から粘土の製造、焼成までに蓄積された知識を、完成した陶磁器だけでなく素材から見直すプロジェクトだ。THE MINOも、15人の作家名を並べるだけではなく、それぞれがどの土を選び、どの表面を残したかへ視線を戻す。

土岐市の美濃焼公式サイトが示す通り、美濃焼には手仕事の一点物と量産を支える産業の両方がある。盆栽鉢という小さな器へ焦点を絞ると、その幅が樹との関係として立ち上がる。織部の緑が葉へ溶け込むのか、結晶釉が異物として光るのか、粗い土が根元の景色を延ばすのか。産地名は、選択肢の数へほどけていく。

9月8日まで 一樹と一鉢を店頭で選ぶ

THE MINO「鉢合わせ」は9月8日まで。伊勢丹新宿店本館5階で展示販売され、会期中でも作品の在庫は動く。目当ての作家や樹がある場合は、来店前に公式イベントページと店舗の最新案内を確認したい。販売品を選ばなくても、同じ樹が別の鉢でどう見えるかを比べるだけで、盆栽を見る焦点は枝葉から足元へ広がる。

一樹に一つの正解があるのではない。樹を静かに支える鉢も、色や質感で樹へ衝突する鉢も、その関係を見直す入口になる。鉢の輪郭を意識した瞬間、盆栽は自然を小さく再現した景色から、土と焼成と人の判断が重なる現在形へ変わる。鉢合わせとは、二つの完成品の遭遇ではなく、これからの見え方を選ぶ行為なのだ。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. PR TIMES 利用規約 — PR TIMES
  2. 美濃の土と盆栽が出会う THE MINO -鉢合わせ- — Art Home Design/PR TIMES
  3. THE MINO -鉢合わせ- つくり手インタビュー — 伊勢丹新宿店
  4. MINO SOIL — MINO SOIL
  5. Shota Miyashita — Ceramic Artist — 宮下将太
  6. 土岐市美濃焼公式ブランドサイト — 土岐市美濃焼PR委員会
  7. THE MINO -鉢合わせ- イベントについて — 伊勢丹新宿店
  8. Interview Tetsuya Hioki — mont et plume

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