冒頭の写真では、通路が植物の間をまっすぐに抜けている。左には銅色や紙色の鉢、右には白い鉢と木のスタンド。葉の大きさも、幹の高さも揃っていない。その不揃いさを、明るい床と木の格子が一つの景色へまとめている。植物だけを切り取るより、椅子や棚と同じ画面で見た方が、家へ迎えた後の姿を考えやすい。
植物を、家具の外側へ置かない
アクタス新宿店は1985年の開業から41年。昨年の2階に続き、今年は1階を改装して8月8日に再開した。新しい1階には、企画を入れ替えるコーナー、国内外の生活道具をゆったり見せる棚、そしてインテリアグリーンを扱うNODERIUMが並ぶ。公式発表では、NODERIUMに沖縄から取り寄せた一点ものの植物が新たに加わった。
NODERIUMは2020年に始まり、2024年に新宿店1階へ東京の旗艦店を開いたブランドである。アクタスは植物を家具や雑貨と同じく、暮らしをつくる要素の一つと位置づけてきた。だから売場で見るべきなのは、葉の珍しさだけではない。ソファの背より高いか、ダイニングから見た枝の線はどうか、鉢の色が床や木部とどのようにつながるか。植物を置く前から、部屋との関係を試せる。
一本の樹形から、部屋の余白を測る
一点ものの植物を選ぶとき、名前や大きさだけでは足りない。正面から整って見える株もあれば、横へ伸びた枝が入口や椅子のそばで効く株もある。葉が密なら背景をやわらかく区切り、枝の間が空いていれば向こう側の家具や光を残せる。売場の通路を歩きながら角度を変えると、鉢を置いた場所から見る景色まで想像できる。
一点ものという言葉を、希少性や価格へ急いで結びつける必要はない。枝の傾き、葉が集まる方向、幹と鉢の間に残る余白が、隣の株とは違うということだ。完成した家具と違い、植物は迎えた後も光の方向へ動き、古い葉を落とし、新しい葉を出す。いまの樹形だけでなく、これから変わる姿も部屋の一部にできるか。それが選ぶ前の大切な問いになる。
鉢も植物の付属品ではなく、床と葉を結ぶ部分だ。白は輪郭を明るく見せ、暗い色は幹の線を引き締める。木のスタンドで少し持ち上げれば、床に広がる葉が家具の座面に近づく。写真に写る売場は、植物を数多く並べるだけでなく、高さと素材を変えて見せている。自宅の写真や置きたい場所の寸法を持って訪れれば、気分だけでなく、動線と光を含めて相談しやすい。
ただし、写真から植物の種類や育てやすさを決めることはできない。NODERIUMはインテリア性と育てやすさを基準に選ぶ植物や、ハイドロカルチャーの品も扱うが、今回の一点ものすべてが同じ管理方法とは限らない。迎える株ごとに、必要な光、温度、水やり、鉢の仕組みを店頭で確かめたい。
木、写真、原画の間を歩く
新設された企画コーナーの最初を担うのは、北海道・東川町の北の住まい設計社だ。廃校を工房にし、1978年から家具をつくる同社の仕事が、同じ東川町を拠点とする写真家・安永ケンタウロスの『水辺の肖像』と並ぶ。現在の店舗案内では、家具の企画と写真展は9月27日まで。木材が家具の形になった後にも残す表情と、水辺の風景を同じ歩幅で見られる。
9月6日までは、coricciの原画展『壁面に映る風景』も開かれている。主題は「bloom」と「silence」。植物の売場から家具、写真、原画へ進むと、葉の緑だけで部屋を完成させなくてよいことが分かる。壁の余白、木の色、器の曲線、植物の影。それぞれが少しずつ受け持つことで、空間の密度は整っていく。
訪れるなら、植物だけを見ない
店は新宿三丁目駅C8出口に直結し、営業時間は11時から19時、水曜定休(祝日を除く)。植物を目的に訪れても、まず近くの椅子へ座る高さ、照明の向き、通路から見た鉢の幅まで眺めてみたい。気になる一鉢が見つかったら、家のどこへ置くかではなく、そこから何を見るかまで考える。植物を選ぶことは、部屋の中に新しい視線の行き先をつくることでもある。
