栗のいがと艶のある実を手前に置き、その奥へ蒸籠の栗おこわ、きのこを重ねたピザ、栗色の菓子を続ける。公式写真の食卓は、一つの植物が、姿と調理法を変えながら皿から皿へ移っていく様子を見せる。左上の「栗びらき」という文字は、秋の実りを祝う印であると同時に、栗の見方をひらく宣言にも見える。
株式会社銀の森コーポレーションが8月4日午前9時に発表した「栗びらき」は、2026年9月1日から10月12日まで。会場は、約6万6000平方メートルの園内に七つの食の専門店が点在する「恵那 銀の森」だ。公式施設案内には、四季の木々の間を歩き、テラスやピクニックエリアで食事を楽しめる場所として紹介されている。建物から次の建物へ移る短い散策も、ここでは一皿の続きになる。
栗きんとんの土地で、栗の次の表情を見る
恵那市観光協会によれば、東美濃の栗きんとんは、栗と砂糖を炊き、茶巾で栗の形に整える秋の和菓子。栗の産地や品種、砂糖、炊き具合によって、店ごとに見た目や味わいが異なるという。地域の秋を代表する一粒があるからこそ、「栗きんとんだけではない」と掲げる今回の構成に意味が生まれる。伝統を離れるのではなく、その中心から周囲を見渡す企画だ。
美栗舎では、栗と少量の砂糖で作る栗きんとんに加え、市田柿へ栗きんとんを詰めた「柿ぼっくり」、三種の和菓子から主役を選べる喫茶のプレートを用意する。小さな茶巾絞りの形をそのまま味わうか、柿の橙色や器の余白との組み合わせを見るか。同じ栗でも、隣に置く素材と皿の選び方で輪郭が変わる。
カリテレモンでは、栗のマカロンやモンブラン、キッシュを組み合わせたアフタヌーンティー、栗のリゾットを主役にしたランチ、栗ときのこのクリームピザが並ぶ。アフタヌーンティーは一人2500円で二人から、利用日の三日前までの予約制。甘い皿の間に塩味を挟むことで、栗はデザートの終点ではなく、食事全体を歩く素材になる。
木の実の形を、パイと出汁へ翻訳する
パティスリー GIN NO MORIの「マロン・グリエのパイ」は、どんぐり粉とどんぐりリキュールを使った生地に、オレンジを利かせたカスタードとモンブランクリームを重ねる。栗だけを強く押し出すのではなく、森で拾う木の実の連なりを生地へ移した設計だ。枝やいがを飾る公式写真と見比べると、菓子の表面だけでなく、その下にある粉や香りの層まで森につながっている。
一方、出汁とご飯のお供の店「竈」では、看板の出汁でもち米と栗を炊く栗おこわを土日祝日に販売する。価格は700円。健美一福には、栗きんとんのそぼろと自家製どら焼き生地を重ねるソフトクリーム、栗のシェイクとかき氷を合わせた土日祝日限定のマロンシェイクが登場する。九月の恵那はまだ暑さが残る。温かな蒸籠と冷たいグラスを同じ日に選べることが、暦ではなく身体で秋へ入るための幅になる。
編集部が注目したいのは、栗の色をすべて同じ茶色として扱っていないことだ。茶巾絞りの淡い黄、焼き色のついたパイ、白いクリームに散る栗そぼろ、出汁を含んだおこわ。それぞれの皿が、実の中にある色と質感を別々に引き出す。植物を知る入口は、葉や花を観察することだけではない。切る、炊く、焼く、冷やす。手仕事が変わるたび、一つの実から異なる食感と香りが現れる。
訪れるなら、九月と十月の光を選ぶ
会期は九月から十月へまたがる。施設の公式案内では、営業時間は九月が10時から18時、十月が10時から17時。水曜休園が基本だが祝日は営業し、時期による変更もあるため、出発前に最新情報を確かめたい。恵那駅からは車で約五分、土々ケ根バス停から徒歩約十分と案内されている。目当ての品には予約制や土日祝日限定があり、販売状況も合わせて確認しておくとよい。
栗きんとんの早期予約は、美栗舎店頭で8月28日まで、公式オンラインショップでは8月13日から26日まで。対象品は9月1日以降の届けとなる。森へ行く日を先に決めることも、家で箱を開く日に秋を迎えることもできる。現地では品数を追うより、最初に一粒の栗きんとんを見て、その後におこわやピザ、洋菓子へ進むと、一つの実がほどけていく順序を感じやすいだろう。
木の実は、収穫されると風景から食べ物へ名前を変える。それでも皿の上に残る形や色をたどれば、枝にあった時間まで想像できる。「栗びらき」がひらくのは、秋の売り場だけではない。森を歩く目と、食卓を見る目を、もう一度つなぎ直す季節の入口である。
- 会期:2026年9月1日(火)〜10月12日(月)
- 会場:恵那 銀の森(岐阜県恵那市大井町2711-2)
- 営業時間:9月は10:00〜18:00、10月は10:00〜17:00
- 休園日、予約、販売日、在庫は訪問前に公式案内で確認
