Culture

海へ開く部屋に、葉の影を置く。NOT A HOTEL AOSHIMA「COAST」

宮崎・青島に8月1日開業。海側のテラスと私庭を、ひとつの滞在動線へ結ぶ新しいビーチハウス

白い壁に、扇状の葉の影が重なる。深い木色の軒下と中庭を隔てるのはガラス戸だけで、開けば寝室のすぐ外に緑と焚き火の場所が現れる。宮崎・青島のNOT A HOTEL AOSHIMAに8月1日、「COAST」と「CHILL2.0」が開業する。海へ向かう建築の反対側に庭を置いたCOASTから、植物が滞在の向きを増やす設計を見たい。

大きな葉が茂る私庭と、木を張った深い軒のアウトドアリビングがガラス戸越しに寝室へつながるNOT A HOTEL AOSHIMA COAST
撮影:Kenta Hasegawa/写真提供:NOT A HOTEL

記事の顔となる写真は、海を写していない。画面の左を占めるのは、光を透かす大きな葉と、その影を受ける白い壁。右には木を張った深い軒、ガラス戸の奥にベッドが見える。中央の炉を囲む低いベンチまで、葉影が斜めに伸びている。青島の海辺に建つ家でありながら、最初に目を止めたいのは、植物がつくる内と外の境目だ。

海側だけでなく、中庭側へひらく

NOT A HOTEL AOSHIMAの新棟COASTは、既存の二つの建築から特徴を受け継いだ。プライベートプールを持つ「SURF」と、二種類のプライベートガーデンを持つ「GARDEN」。海へ出る動線と、庭にとどまる動線を、133.57平方メートルの屋内と76.52平方メートルの屋外空間を持つ一棟へまとめている。

海側にはプールサイドテラス、入口を抜けた側にはBBQや焚き火に使える私庭がある。二つの寝室のうち、一階のゲストベッドルームはその庭につながる。眺望を一方向へ集中させず、朝は海、食事は庭、休むときは室内というように、滞在する人が身体の向きを選べる構成だ。

リビングは天井高3.2メートルのメゾネット空間で、窓を開けるとアウトドアリビングへ続く。公式資料は庭の植物名や植栽設計者を公表していないため、樹種や育て方までは読み込めない。それでも、庭が寝室、食事、焚き火という複数の行為と直接つながっていることは、植物を背景ではなく、滞在の一室として考えた設計だと分かる。

葉の影が、木とタイルの境目をほどく

写真では、庭の葉は軒より高く伸び、白い壁の上で細長い影と扇形の影を重ねる。床と炉は直線で組まれ、ベンチと軒には濃い木色が続く。動かない水平線の多い空間に、風や光で輪郭を変える影だけが入り込む。植物そのものの量より、その影が室内側まで届く距離が、この庭を広く見せている。

設計はNOT A HOTEL ARCHITECTSと前田建設工業、デザイン監修はジェネラルデザイン代表の大堀伸が担当した。COASTの公式ページは、大堀の仕事を、直線的で鋭い形と、手の跡が残るクラフト感の組み合わせとして紹介する。写真に見える木、石調の床、白い壁も、それぞれ面の性格がはっきりしている。そこへ葉影が重なることで、硬い素材同士の接点に、時刻によって変わる層が一枚加わる。

この写真を自宅のベランダや窓辺へ引き寄せて見るなら、植物の数ではなく、今ある葉影の位置を確かめたい。朝と夕方では、同じ葉でも壁や床に描く線が変わる。家具のすぐ横に鉢を並べるだけでなく、光がつくる二つ目の輪郭まで眺めると、植物と素材の関係が見えやすくなる。

私庭から、芝生の広場へ

今回の更新は、客室だけでは終わらない。2022年に開いたAOSHIMAへCOAST全4室とCHILL2.0全1室が加わり、共用部にはスケートボードパークと芝生のパークエリアが新設された。公式サイトは、芝生広場をヨガや休息に使える場所として案内し、BBQエリアは南国の緑に囲まれた空間として紹介している。

私庭は一棟の内側で過ごし方をつくり、芝生は宿泊者が部屋を出たあとの居場所をつくる。さらに敷地内のレストラン「LDK」は2026年4月に改装され、海を見渡す空間と地元食材の食事を担う。部屋、庭、広場、食事の場所が近いからこそ、植物は鑑賞の対象だけでなく、どこで立ち止まり、どこまで歩くかを決める目印になる。

旅先の紹介は、住所と設備の一覧へ傾きやすい。ここでRareDexが注目したのは、海辺の強い眺望に対して、庭がもう一つの中心をつくっていることだ。海を見るときは視線が遠くへ伸びる。葉の影を見るときは、壁、床、椅子、自分の足元へ戻る。旅先の建築に植物がある意味は、その距離の切り替えにもある。

8月1日、青島で見るべき境界

COASTとCHILL2.0は2026年8月1日に開業する。所在地は宮崎市青島2丁目で、宮崎ブーゲンビリア空港から車で約15分と案内されている。COASTは不動産としては完売済みで、滞在方法や予約可否はAOSHIMAの公式案内で最新情報を確かめたい。

滞在する機会があれば、海側のプールだけでなく、入口から私庭、一階の寝室、リビングへ続く順番を見たい。共用部では、芝生の広場とBBQエリアの緑が、建物の白い面や海の青とどう分かれて見えるかも確かめられる。公式写真と同じ景色を探すより、葉影がどこまで室内へ届くかを追うほうが、その日の光と庭の関係を読めるはずだ。

旅先の植物は、ときに南国らしさを示す記号で終わる。COASTの写真に残るのは、もっと小さく具体的な働きである。白い壁へ影を置き、木の軒とベッドの間にもう一つの層をつくり、海へ向いていた身体を庭へ戻すこと。建築の輪郭が完成したあとも、植物は光とともに部屋の表情を更新し続ける。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. NOT A HOTEL AOSHIMAの新ハウス「CHILL2.0」「COAST」が8月1日より開業 — NOT A HOTEL株式会社
  2. NOT A HOTEL AOSHIMA — NOT A HOTEL
  3. COAST - NOT A HOTEL AOSHIMA — NOT A HOTEL
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