Culture

器の輪郭に、育てる光。叢と吉田直嗣の「光を纏う植物」

表参道の地下で、植物・陶芸・照明・什器を「生き続ける環境」として組み直す

白い背景の右側に、深い緑の株と、黒い釉薬が流れる白い器が立つ。2026年7月31日、CIBONE表参道で始まる「光を纏う植物」は、植物屋・叢と陶芸家・吉田直嗣が、鉢植えを飾りではなく生長する環境として考える合同展だ。器、育成のための光、家具のような什器を一つの景色に重ねると、植物を部屋に迎える選択は、置き場所をつくることから始まる。

白い背景の右側で、幾重にも隆起した深緑の植物が、黒い釉薬の流れる白い器に植えられた公式写真
画像提供:CIBONE/叢/吉田直嗣

最初の一枚では、うねるように重なった深緑の株が、白と黒の器から立ち上がる。株の稜線には白い筋が走り、器には黒い釉薬が太い筆跡のように流れている。植物と陶器は色を合わせているのではない。それぞれの線がぶつかり、画面の右側に強い輪郭をつくる。左側に広く残された白い余白まで含めて、置く場所を考えさせる写真だ。

「光を纏う植物 叢と吉田直嗣」は、2026年7月31日から8月16日まで、東京・表参道のCIBONEで開かれる。植物屋・叢が選ぶ植物に、吉田直嗣が本展のために制作した器を合わせ、さらに叢が設計した光を内包する什器「Kaku」を組み込む。植物、器、照明、家具を別々に選ぶのではなく、株が生き続ける小さな環境として一度に見せる試みである。

白と黒の器が、株の癖を受け止める

叢が掲げるのは、「いい顔してる植物」という考え方だ。整った形だけを美しさの基準にせず、一つひとつの個体が持つ歪みや傷、生長の跡を見て植物を選ぶ。今回も、吉田の器と呼応する個体を見極め、仕立てたと公式案内にある。同じ種類の中にもある個体差が、器との距離によっていっそう鮮明になる。

吉田は白、黒、グレーを基調に、研ぎ澄まされた縁を持つ器を制作してきた。本展では、食卓に置く器とは異なり、植物が入り、変化を続けることを想像しながら手を動かしたという。器が完成品として前へ出すぎず、かといって背景にも退かない。土と根を受け止める機能が、株の輪郭を切り出す額縁のような役割まで担う。

光を隠さず、育つ条件として見せる

もう一つの主役が、叢の新作什器「Kaku」だ。植物の生育環境を起点に設計され、内部に光を組み込む。叢はこれまでも人工光を取り入れてきた一方、照明器具が入ることで空間の見え方に課題を感じていたと説明する。今回は、植物を育てる機能と、部屋の景色を整える意匠を、別々の問題にしない。

発表では、Kakuは税込24万2,000円からで、複数のサイズを用意し、会期中に受注すると案内されている。ただし、光の仕様や、どの植物にも一律に適するという説明はない。照明を家具の中へ収めたから育成条件がすべて整うわけではなく、迎える株に必要な光量、照射時間、風、水、温度を確かめる作業は残る。その現実を消さずに、道具を美しく見せるところに本展の意味がある。

植物のある部屋では、鉢を選び、棚を置き、最後に育成ライトを足すことが多い。すると、配線や器具だけが空間から浮くことがある。Kakuは順序を逆にする。まず光を含む居場所をつくり、その中で器と株の関係を考える。照明を隠すための家具ではなく、植物に必要な条件を部屋の設計へ最初から入れるための什器として見ると、価格や造形だけではない論点が浮かぶ。

植物を選ぶ前に、置く場所を測る

この展示を自分の部屋へ引き寄せるなら、植物を買う前に、置きたい場所の明るさと使える面積を確かめたい。窓からの距離、季節で変わる直射光、照明を点けられる時間、鉢を回したり水を運んだりできる動線。器の色や株の形を選ぶ楽しさは、その場所で世話を続けられることと結びついて初めて長く残る。

公式写真に写る株には、均一ではない盛り上がりや、表面の色の濃淡がある。そこを欠点として隠すのではなく、白黒の器が視線を受け止める。叢が語る「元気に生きていること」の価値は、形の珍しさを競う話ではない。今の姿だけでなく、これから光を受け、伸び、傾き、器との比率を変える時間まで選ぶことだ。

表参道で、明日から始まる小さな環境

会場はCIBONE表参道、GYRE地下1階。会期は7月31日から8月16日、時間は11時から20時まで。初日の7月31日は18時から20時までオープニングレセプションがあり、展示エリアは通常どおり11時に開く。叢店主の小田康平と吉田直嗣は7月31日と8月1日に在廊予定で、時間は変更される場合がある。訪れる前に公式案内を確認したい。

会期中はKakuの受注に加え、現在は制作を終えている吉田のシェードも数量限定で販売予定とされる。何を買うかを急ぐより、植物の形、器の縁、光の位置を一つの画面として見ることから始めたい。部屋に植物を置くとは、空いた棚へ鉢を足すことではない。株が変化を続けられる場所を、家具や光と一緒につくること。その順序を表参道の地下で確かめられる。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. 光を纏う植物 叢と吉田直嗣 — CIBONE
  2. 光を纏う植物 – 叢と吉田直嗣 @CIBONE — 叢 – Qusamura
  3. 叢と陶芸家・吉田直嗣による合同展「光を纏う植物」をCIBONE(表参道)にて開催 — 株式会社ウェルカム
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