メルシーフラワーの公式写真では、すだれを背景に、青い地と赤い花器が置かれている。その上で、花は同じ方向を向かない。黄色い花は球のようにまとまり、赤い花弁は外へ反り、紫の穂は高く伸びる。ひとつの花束のなかに、打ち上げ花火、手持ち花火、消える直前の光までを探したくなる構成だ。
7月30日から週末にかけて開かれる「花火フェア」は、花そのものの輪郭を見比べ、夏の行事を家の中へ持ち帰る提案である。会場は同社が委託販売を行う首都圏のスーパーマーケット。いつもの食材を選ぶ動線に、花を一本見る時間が差し込まれる。
夜空の形を、花の輪郭から選ぶ
公式案内に挙げられたのは、ヒマワリ、グロリオサ、ディスバッドマム、アスター、リアトリス。ヒマワリやマムは中心から花弁が広がり、アスターは細かな光の粒を集めたように見える。グロリオサの反り返る花弁には炎の動きがあり、リアトリスの細長い穂は手持ち花火の線を思わせる。色を合わせる前に、広がる、反る、立つという形の違いから選べるのが、この企画の面白さだ。
花火を表すために、すべてを大きな束へまとめる必要はない。丸い花を一輪だけ低い器へ挿せば、輪郭そのものが際立つ。グロリオサの曲線を長めに残せば、茎から花弁まで視線が動く。異なる花を組み合わせるなら、高さをそろえず、光が打ち上がる順序を決めるように配置すると、それぞれの線が埋もれにくい。
RareDexが注目したいのは、季節の象徴を絵柄で借りるのではなく、生きた素材の形そのものが、花火の景色をつくる。花は開き方も向きも少しずつ変わる。同じ束でも、家へ連れ帰った日の姿と、数日後の重心は同じではない。花火が一瞬の形を残すなら、切り花はその形をゆっくり組み替えていく。
スーパーの花売り場が、季節の入口になる
メルシーフラワーは、量販店向けカジュアルフラワーの製造、納品、売り場づくりを手がける会社だ。公式サイトによれば、取引先の売り場を巡回しながら商品と陳列を整える委託販売を中心に展開している。専門店を目的地にしなくても、暮らしの買い物の途中で季節の花に出会える仕組みをつくってきた。
フェアで案内される花は、398円から698円(税別)の価格帯。販売される種類や組み合わせは店頭の入荷によって異なり、商品がなくなり次第終了する。だから、写真と同じ束を探すより、その日に並ぶ花の線を見比べたい。花器を先に決めておけば、口径や高さに合う一輪を選びやすい。
赤や紫を集めれば夜空との対比が強くなり、黄色を一輪置けば昼の部屋にもなじむ。ガラスの器なら茎の交差まで見え、陶器なら花の色が前へ出る。フェア名は花火でも、飾り方まで一つに決められてはいない。夏の記号を、自分の部屋の素材へ翻訳する余白が残されている。
選ぶ前に、花を置きたい棚やテーブルを一枚撮っておくのもいい。背景が白いなら輪郭の細い花、木の色が深いなら明るい花というように、売り場の束を自分の部屋へ重ねて考えられる。花器の口が細ければ一輪、広ければ線の違う二、三本。量ではなく、置く場所との関係から決めると、家へ戻ってから迷いにくい。
持ち帰った花を、涼しい場所で見守る
真夏の切り花は、買ったあとにどこへ置くかまでが選択になる。農林水産省は、花瓶の水に浸かる余分な葉を取り、花瓶の水は継ぎ足さず毎日交換する方法を案内している。直射日光やエアコンの風が直接当たる場所を避け、できるだけ涼しい位置を選びたい。
切り戻しと水の深さは、花によって扱いが違う。農林水産省の案内では、ヒマワリのように茎が柔らかい花は水平に切り、少量の水で飾る「浅水」が示されている。一方、混合の花束では花ごとの条件が重なるため、購入時の表示や店頭の案内を優先する。長持ち剤を使う場合も、製品に記された希釈量を守りたい。
花火を見る予定がある人も、今年は家で過ごす人もいる。どちらの日にも、花を選ぶ手元から夏は始められる。空へ上がる光は数秒で消えるが、花瓶の中の線は朝ごとに少し変わる。その違いに気づくための一束なら、買い物袋の隣にある季節の入口を見過ごさずに済みそうだ。
