写真の桃色の花のそばに、黄緑の羽根が何本も重なっている。1枚の薄い葉に切れ込みが入っているのではない。細い軸の左右に、独立した小葉が対になってつく。開いているときに軸を1本選んでおくと、閉じたときに何が動いたのかを見失わずにすむ。
上を向く小葉、下を向く葉柄
小葉が持ち上がる一方で、葉全体を茎につなぐ柄は下へ傾く。遠目にはひと息にうなだれたようでも、近くでたどると向きは反対だ。小葉の付け根にも葉柄の付け根にも、葉枕(ようちん)というふくらみがある。ここの細胞が水を出し入れして張り具合を変えると、付け根が曲がり、その先の緑が動く。
指先がかすめたときにも、小葉はさっと合わさる。埼玉大学などの研究グループは、葉を傷つけた場所から信号が伝わり、葉枕に届いた直後に葉が動くところを捉えた。動ける葉と動けない葉を並べると、バッタは動けない方を多く食べた。こちらは、虫にかじられたときにも間に合う速さの話だ。
戸棚の中にも夜が来る
夕方、触れずに待っているときの動きは、就眠運動と呼ばれる。日が落ちるから閉じる、だけでは説明しきれない。1729年、フランスの天文学者ド・メランは、オジギソウを暗い戸棚に置いた。ケンブリッジ大学植物園が紹介するその観察では、昼の光が届かなくなっても、葉はほぼ1日の周期で開いたり閉じたりした。
窓辺に鉢があるなら、昼に開いた小葉のすき間から、向こうに見えるものを1つ覚えておく。夕方、同じ場所から見ると、左右に広かった羽根は細くなり、すき間の形も違っている。指に応えた一瞬とは別の時間が、同じ葉の上を通っている。
