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3つの花を、1本の苗から 神代植物公園「菊花大会」

大菊、古典菊、小菊盆栽 72の提灯が加わる秋の園路で、仕立ての時間を見る

1本の苗から枝を3本に分け、その先に大きな花を1輪ずつ咲かせる。3つの花は同じ高さに並べるのではなく、前後と高低をつけて1鉢の形に整えられる。10月31日に始まる神代植物公園「菊花大会」では、その盆養をはじめ、背を抑えた福助作り、だるま作り、古木の姿へ導く小菊盆栽が園路に並ぶ。花の数より先に、そこまで形をつくった時間を見たい。

黄色、赤、紫の小菊を円錐形に仕立て、年代物の荷車の上下へ組み上げた2025年の神代花車。
画像:公益財団法人東京都公園協会(主催者配布資料/2025年撮影)

1本の苗から枝を3本に分け、その先に大きな花を1輪ずつ咲かせる。3つの花は同じ高さに並べるのではなく、前後と高低をつけて1鉢の形に整えられる。10月31日に始まる神代植物公園「菊花大会」では、その盆養をはじめ、背を抑えた福助作り、だるま作り、古木の姿へ導く小菊盆栽が園路に並ぶ。花の数より先に、そこまで形をつくった時間を見たい。

3つの花は、1本の苗から分かれる

大菊の基本とされる盆養は、1本の苗から3本の枝を伸ばし、3つの花を調和させる仕立てだ。ひとつの根から吸い上げた水と養分を、どの枝へ、どの速さで渡すか。摘み、支え、向きを整える判断が、最後には3輪の距離として見える。花だけを切り取ると似て見える株も、茎の開き方と葉の残り方まで追うと、それぞれの育て手の手順が現れる。

福助作りは5号鉢を使い、鉢底から花首まで40センチ以下に抑えながら、1本に大きな1輪を咲かせる。だるま作りは7号鉢の3本仕立てで、最も高い花の首まで60センチ以下。大きな花を高く伸ばすのではなく、限られた鉢と高さの中へ密度を集める。盆養と並べて見ると、同じ大菊でも、枝を広げる仕立てと、背を詰める仕立ての違いが分かりやすい。

小菊盆栽は、草本の小菊を約15か月かけて、年月を重ねた樹木のような姿へ導く。幹に見える部分、根が岩を抱くように見える配置、枝先の小さな花。そのどれも、実際の樹齢を装うための飾りではない。生長の速い草花へ、老木を思わせる尺度を与える技術だ。大菊の1輪と小菊盆栽の全景を往復すると、菊という1種の植物に、異なる時間の見せ方があることに気づく。

江戸、伊勢、肥後 土地の美意識が花形に残る

会場には江戸菊、伊勢菊、肥後菊などの古典菊も並ぶ。主催者は、これらを地方ごとの美意識に基づいて栽培されてきた品種群と説明する。中輪を中心に、花弁の開き方や先端の反り、中心部との距離がそれぞれ異なる。名前を産地の記号として読むだけでなく、どこを整いと感じ、どの崩れを面白いと残したのかを見る。

菊は江戸時代に日本で独自の発展を遂げ、明治期に大菊栽培が全国へ広がったと公式案内は記す。花形の違いは、突然現れた珍しさではなく、同じ植物を選び、挿し、咲かせてきた履歴の積み重ねだ。古典菊の1輪を前にしたら、色の好みだけで通り過ぎず、花弁が内へ抱えるのか、外へほどけるのか、その動きを正面と横から比べたい。

11月7日からは「江戸の流行最先端―菊が彩る園芸文化―」のパネル展示も予定される。屋外展示場には高さ1.8メートル、幅約6メートルの浮世絵風イラストや辻行灯、屋台を思わせる台が置かれるという。史料展示を先に読む日と、花を先に見る日では、同じ古典菊の輪郭も少し変わるだろう。パネル開始前に訪れる場合は、屋外の仕立てを主役にして見る。

花車の背後に、72の提灯が加わる

神代花車は、年代を重ねた荷車へ色とりどりの小菊を組み上げる、この大会の象徴だ。30年以上前から展示され、職員5、6人で制作する。主催者が配布した写真は2025年の花車で、2026年の展示そのものではない。それでも、円錐形に仕立てた小菊を荷台の上下へ重ね、車輪の黒と花の色を対照させる構成は、1鉢ずつの技術が大きな景色へ変わることを伝えている。

2026年は花車の背後に、幅約8メートル、高さ2.8メートル、72個の提灯からなる提灯台が加わる。写真に写る2025年の姿へ提灯を想像で足すのではなく、実際の会場で、花の塊と光の器がどの距離に置かれたかを確かめたい。生育状況により一部の種類が展示できない場合もあるため、目当ての仕立てがあるなら当日の公式案内を確認する。

第66回菊花大会は、神代植物公園の正門を入ってすぐの屋外展示場で、11月23日まで。開園は9時30分から17時、最終入園は16時。最終日の展示は16時までで、月曜休園、祝日の場合は翌日が休園となる。一般入園料は500円。花車へ急ぐ前に、盆養の3本がどこで分かれ、福助の背がどこで止まり、小菊盆栽の枝がどちらへ流れるかを1鉢ずつ見る。大きな景色は、その小さな判断の集合として立ち上がっている。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. 第66回神代植物公園「菊花大会」10月31日(土)~開催! — 公益財団法人東京都公園協会
  2. 第66回 神代植物公園「菊花大会」 — 東京都公園協会 神代植物公園
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