鉢の前で迷うとき、見比べたいのは葉の形だけではない。棚に置くのか、壁に掛けるのか、空中に吊るすのか、ガラスの中で景色をつくるのか。11月3日から神楽坂に開く「有吉園芸店 KAGURAZAKA」には、異なる姿で暮らす植物が1つの店へ集まる。珍しさを競う売り場ではなく、自分がどの距離から植物を見守りたいかを考える6日間として歩きたい。
交配の時間が、1株になる
会場はAKOMEYA TOKYO in la kagū。BS朝日「夢が咲く 有吉園芸」の放送100回を記念する、番組初のイベントだ。入口になるのは、番組内で有吉弘行が交配し、サトウ園芸が育成と管理を担った「有吉パンジー」。完成した花の色だけでなく、交配から生育、店頭へ届くまでに役割が渡っていく過程が、1株の背後にある。
有吉パンジーは事前受取予約制で、会場では予約済みの株を受け取る。色は選べず、生育状況によっては当日の引き渡しに間に合わず、後日発送になる場合もあると案内されている。花は工業製品の在庫とは違う。その揺らぎまで条件に含めて選ぶことが、この販売会のいちばん園芸的な部分かもしれない。
置く、掛ける、吊るす、囲う
店内では、植物の姿と置き方が続けて切り替わる。IMAMAのビカクシダは板に付けて壁へ。南紀グリーンハウスのエアプランツは、土の鉢から離れた姿を選べる。Urban Jungleはアンスリウムやモンステラなどのアロイドを、PLANET ROCK PLANTSはアガベを並べる。0g0labの多肉植物やサボテン、芽の巣山の陶器鉢まで含めると、植物そのものと器の関係も見比べられる。
ADA LABのパルダリウムは、苔や熱帯植物をガラスケースの中に組み、湿り気のある小さな景色として眺める。ビカクシダの板付け、パルダリウム、多肉植物の寄せ植え、シダやポトスなど登る植物の鉢植えには、それぞれ事前予約制のワークショップがある。買う前に手を動かすと、正面だけでなく、固定する場所、水が届く範囲、成長していく向きまで見えてくる。
同じ室内に置ける植物でも、同じ世話でよいわけではない。壁面に掛かるビカクシダ、空気中の水分も受けるエアプランツ、支えに沿って伸びるポトス、閉じた景色をつくるパルダリウムでは、観察する場所が変わる。会場で形に惹かれたら、家に帰ってから毎日どの面を見られるかまで想像してみたい。
買う前に、1つの観察を決める
11月4日の15時から17時には、植物や生育環境の情報をもとに相談できる無料の出張植物診断も予定される。新しい株を迎えるだけでなく、すでに家にある植物の変化を言葉にする機会だ。葉色、置き場所、水やりの間隔など、困りごとを1つに絞って持っていけば、売り場を見る目も少し変わる。
開催は11月3日から8日まで、通常は11時から20時。初日のイベント会場だけは19時に閉まる。入場は無料だが、有吉パンジーと各ワークショップは事前予約や個別の料金があり、販売数や空き状況も変わる。訪れる前に、BS朝日のイベント案内とAKOMEYA TOKYOの案内で最新条件を確かめたい。
パンジーの花を近くで追うのか、壁のビカクシダを少し離れて見るのか、ガラスの中の湿度を読むのか。植物を選ぶことは、これから続ける観察を1つ選ぶことでもある。神楽坂の6日間で持ち帰りたいのは、名前の珍しさより、毎日目を向けられる距離だ。
