画面を閉じた十分間、仕事の言葉から少し離れる。そこに置かれるのは、眠るための椅子と、香りや手触りを確かめる植物だ。東京都は都内三か所のオフィスビルに「東京グリーンビズ・ラウンジ」を設け、緑のある空間での短い休息を試している。効果が発表される前の実証を、植物が働く場所へ入る小さな入口として見る。
結果の前に、休む場所をつくる
実証は大手町、市谷、赤坂のオフィスで順に行われ、最後の会場となる赤坂インターシティAIRでは10月21日から23日まで開かれている。赤坂会場は12時から17時まで、申込み不要で一般の人も利用できる。仕事を続ける場所のすぐ近くに、短時間だけ速度を落とす空間を差し込む試みだ。
用意される体験は二つある。ひとつは、緑に囲まれた場所で短い仮眠をとる「グリーン・パワーナップ」。もうひとつは、スマートフォンをロッキングボックスへ預け、十分間、ハーブなどの香りや感触へ注意を向ける「グリーン・デジタルデトックス」だ。植物は眺める背景ではなく、時間の使い方を変える手がかりとして置かれる。
植物を、装飾から検証の対象へ
ここで大切なのは、緑が休息に効くと先に結論づけないことだ。東京都は来場者に体験してもらい、その効果を検証するとしており、実施状況や結果は今後公表される。現時点で読めるのは、植物のある空間、仮眠、端末から離れる時間を組み合わせ、来場者の反応を確かめる設計までである。
会場づくりにはオフィスビルの運営者に加え、DAIKENと東京都造園緑化業協会が植物展示と装飾で協力している。鉢を一つ机に足すだけでなく、身体を休める場所の広さや視線、香りに触れる順序まで含めて緑を配置する。植物を福利厚生の記号にせず、どの条件なら働く場所で受け取られるのかを測ろうとしている。
十分後に、机へ何を戻すか
実証は短い。だからこそ、参加するなら「すっきりしたか」だけでなく、葉へ目を向けた時間、香りを意識した瞬間、端末へ手を伸ばさなかった長さを覚えておきたい。アンケートは、その個人的な感覚を、オフィスの緑を考える材料へ戻すための出口になる。
赤坂で体験できるのは10月23日まで。結果が出るまでは、緑の効果を約束しない。その代わり、仕事の合間に植物へ向き直る十分間が、どんな環境なら成立するのかを観察する。休息の手応えと同じくらい、緑を置く場所のつくり方が、この実証から残るはずだ。
