地面から根が離れ、花のような器官が暗い空間に浮かぶ。planticaが手がけるVRChat公式ワールド「Cosmic Wonderland」は、実在しない24種の植物を、未知の惑星にある植物園として組み立てた。2026年10月23日の一般公開に合わせて開かれるリスニングイベントでは、アンビエントな音の中を歩く。ここで見るのは珍種の一覧ではなく、環境が違えば植物の形はどこまで変わるのか、という想像の入口だ。
形から、環境を逆算する
架空植物という言葉は、何でもありの装飾にもなり得る。けれど「Cosmic Wonderland」が面白いのは、一株の輪郭を見たあとに、その形を必要とした環境を考えさせることだ。細く伸びるのは光が遠いからか。厚い表面は乾燥から身を守るためか。公式説明では、それぞれの植物に未知の惑星での環境設定と形態が与えられている。科学的な種の記載ではなく、形と生育条件を結び直すための想像上の図鑑である。
ワールドの重力は地球の5分の1に設定され、アバターは高く跳べる。植物を上から見下ろし、次には下側から見上げる。現実の植物園では地面や鉢が決めている視線の高さが、ここではいったん外される。葉の裏、根の向き、群落の間隔まで、どこを正面と呼ぶかが揺らぐ。重力の軽さは演出であると同時に、植物の形を別の角度から読むための仕掛けになる。
図鑑と風景を往復する
空間はCORRIDOR、HALL、TRAIL、LABの四つに分かれる。広い景観の中で植物に出会い、LABでは24種の設定を日本語と英語のパネルやカタログで確かめる。先に説明を読んでから眺めることも、名前を知らずに形へ惹かれたあとで戻ることもできる。植物園の樹名札と同じく、情報は風景を閉じる答えではなく、もう一度その株を見に行く理由になる。
制作はplanticaが企画・プロデュースし、クリエイティブディレクションを木村貴史、アーティスティックディレクションを古谷茂利、ワールドのディレクションと制作を株式会社Vが担った。花を空間、ファッション、プロダクトへ移してきたplanticaの仕事が、ここでは生花の質感を再現するのではなく、植物らしさを構成する線や反復、群れ方へ向かう。実物がないからこそ、私たちは何を見て「植物」と感じたのかが残る。
音が、園路の速度を変える
一般公開日の10月23日20時から23時までは、塩谷雄介が音楽を担うオープニング・リスニングイベントが予定されている。会場は公式グループのGroup Publicインスタンスで、グループ参加は不要。ただし入場数には上限があり、イベントはPCのみ対応と案内されている。参加する場合は、当日に公式グループとワールドのページで最新条件を確かめたい。
植物を見る速度は、音で変わる。説明を順に読む歩き方から離れ、低い音の持続に合わせて一株の周囲にとどまると、葉のような面の重なりや、浮遊する器官どうしの距離が目に入る。現実の植物へ戻ったあとも、同じ問いは残せる。窓辺の葉が向く角度、根が選ぶ隙間、乾燥地の株が蓄える厚み。見慣れた形に「どんな環境がこれをつくったのか」と尋ねると、架空の庭は日常の一鉢へ静かにつながる。
