画面の中に二段の棚があり、十鉢までの塊根植物が並ぶ。丸い幹、少し傾いた葉、二つに分かれた頂部。10月13日に公開されたブラウザゲーム「Caudex Days」は、苗を速く完成させるゲームというより、同じ日に蒔いた種が同じ形にならない時間を眺める場所だ。土に触れない画面だからこそ、発芽を待つこと、丸さを比べること、手元に残す一鉢を決めることが、棚の輪郭として見えてくる。
四粒を蒔き、違いが出るまで待つ
一つの鉢に蒔ける種は四粒。公式案内では発芽まで六〜三十時間ほどで、すべてが芽を出すとは限らない。およそ三日たつと、同じ種類でも幹の丸さや姿に違いが現れるという。数字は現実の栽培速度ではなく、ゲームの中の時間だ。それでも、揃わなさを失敗として消さず、最初の観察点に置いた設計には、実生を扱う店の視線が表れている。
制作したkonaeは、種から育てた小さな塊根植物を扱う専門店で、実店舗ではLEDの棚を使っている。「Caudex Days」は、その棚をスマートフォンの画面へ移し、現実では種類が見分けられるまで約二か月かかる生長を、およそ三日に圧縮した。速さそのものより、棚を毎日見返す習慣を小さく試せることが、この置き換えの面白さだ。
最初に育てられるのは、パキポディウム・グラキリス、アデニア・グラウカ、ケラリア・ピグマエア、パキポディウム・ウィンゾリーの四種。配布された画面には、細い葉を広げるもの、低い枝を持つもの、二つの頭を持つものが同じ棚に並ぶ。名称を覚える前でも、幹と葉の比率を横に見比べることができる。
水やりを、数字ではなく皺で返す
序盤の水やりは自動で、育つと五段階の頻度から選べる。少なければ幹に皺が寄り、多すぎれば根が傷むという反応が画面へ返る。ここで示されるのは、実際の四種に共通する栽培表ではない。光、温度、用土、季節を省いたゲーム上の合図であり、本物の鉢では種類と環境ごとに判断が必要になる。
ブラウザを閉じても時間は進み、発芽や丸みの変化は後から確かめられる。常に画面を触り続けるのではなく、一度離れて戻ることが遊びの一部になる。植物を題材にしたゲームが、連打や即時の達成ではなく、見ていない間の変化を中心に置く。そこに、実際の棚とよく似た空白がある。
基本利用は無料で、育てられるのは十鉢まで。ゲーム内の通貨で種を買い、育てた株を売るが、通貨や種を現金で購入する仕組みはないと案内されている。十鉢を超える機能は準備中だ。棚に限りがあるから、丸さの点数だけでなく、どの個体を残し、どれを手放すかという小さな編集が生まれる。
専門店の棚が、もう一つの入口になる
konaeは、開業から三年で全国四十五都道府県へ四百二十株以上を届けたとしている。これは同社の発表による数字だが、ゲームが突然生まれたのではなく、発送前の苗を日々見てきた経験から組み立てられたことは分かる。開発者としての仕事と専門店の棚が、四粒の種と十鉢の上限へ結びついた。
一方で、丸さを数値にし、高い値で売れる仕組みは、個体差を見ることを競争へ変える。珍しい二頭株も「レア」として現れる。実物の魅力は一つの点数には収まらないが、形の違いに気づく入口にはなり得る。ゲームの評価をそのまま植物の価値に持ち込まず、なぜ自分がその輪郭に目を留めたのかを考える余地が残る。
画面の鉢は、土の重さも、季節の温度も伝えない。本物を育てる代わりにはならない。それでも、四粒の発芽が少しずつずれ、同じ棚に違う丸さが並ぶのを見たあとなら、次に出会う一株を、完成した形だけでなく、そこへ至る時間から眺められる。十鉢の棚は、植物を急がせる場所ではなく、待つ視線を小さく練習する場所になっている。
