丸く育つはずのサボテンが、波打つ帯になる。別の株は、苔が地面を覆うような低い塊になる。伊豆シャボテン動物公園で10月10日に始まる「第13回おもしろサボテン品評会」には、輪郭の崩れ方が異なる二つのマミラリアが並ぶ。珍しさだけで通り過ぎず、どこで生長の向きが変わったのかを見比べたい。
まず、丸い姿を思い出す
運営会社の公式告知によると、品評会で公開されるのは、園のコレクションから選ばれた10株。なかでも「敷島・綴化」は、通常なら丸い姿に育つ敷島の生長点が帯状になり、折りたたまれたリボンのような株へ変わったものだ。公式写真では、鉢の中央から明るい緑の稜が何本もせり上がり、先端が波のように連なっている。一本の珍品というより、通常形と並べたとき初めて変化の大きさが分かる、形態の記録でもある。
もう一株のマミラリア・ボカサナ ‘フレッド’は、同じ発表で「石化」と記される。通常の高砂は白い刺に包まれた丸いサボテンだが、‘フレッド’は艶のある緑の小さな塊を密に重ね、地表へ広がる。綴化が帯の反復として見えるのに対し、こちらは中心の読みにくい群れとして現れる。
二株を同じ「変わったサボテン」にまとめると、違いは輪郭の奇抜さで終わる。通常形を頭に置き、丸さが帯へ変わったのか、細かな塊へほどけたのかを比べると、形は単なる飾りではなく、生長の記録として見えてくる。コレクションの面白さは、名前の数を増やすことだけではない。同じように丸い出発点から、どれほど異なる時間が積み上がったかを一鉢ずつ保存し、隣り合わせて確かめられることにもある。
点が帯になり、帯が折り重なる
ウィスコンシン大学エクステンションは、通常の植物では茎頂分裂組織の生長が一点に集まり、ほぼ円筒状の軸をつくると説明する。綴化ではその生長点が横へ長くなり、平たい帯や扇のような組織が生まれる。サボテンではその帯が伸びながら曲がり、重なり、脳のひだを思わせる輪郭になることがある。上へ伸びる一点が、横幅を持つ長い縁へ置き換わると考えると、波は表面の模様ではなく、生長する場所そのものの形だと分かる。
写真の敷島を見ると、一本の茎が何本にも割れたというより、生長する縁そのものが長くなったことが分かりやすい。稜と刺座は帯の表面に沿って続き、先端は一定方向へ伸びず、互いを避けるように折れ曲がる。正面の派手さより、鉢際から上端まで線を追うと、変化の仕組みが近くなる。
ただし、写真だけからこの株の原因を決めつけることはできない。RHSは綴化の要因として遺伝的変化、微生物、凍害や虫害、機械的な傷など複数を挙げ、原因が明確でない例も多いとする。ウィスコンシン大学の資料は、こうした形が栄養繁殖で保たれ、収集対象になる場合がある一方、通常の生長へ戻る部分が現れる例も記す。展示名は形を読む入口であって、来歴の分からない一株へ同じ原因を当てはめる札ではない。
投票の前に、輪郭を三度見る
会場で最初に見たいのは、株全体の外周だ。次に視線を鉢際へ下げ、どこから帯や小さな塊が立ち上がるかを見る。最後に近づき、刺座と刺がどの方向へ並ぶかを追う。この三つの距離を往復すると、綴化の大きな波と、‘フレッド’の細かな反復を別々の生長として覚えられる。写真では平面に重なるひだも、実物なら手前と奥の距離、影の深さ、帯の厚みまで読める。そこが現地で見る理由になる。
品評会は11月23日まで、第5温室メキシコ館内で開かれる。来園者は展示10株から気に入った株へ投票でき、名物スタッフによる解説の公式SNS配信も予定されている。開催条件や園の営業情報は来園前に公式サイトで確かめたい。
投票は、いちばん奇妙な姿を選ぶだけの行為ではない。通常形を思い、輪郭を追い、生長点の変化を想像したあとで、もう一度一鉢の前に戻る。その往復が、珍奇植物を「珍しいもの」から、時間をかけて形をつくった一株へ変えてくれる。
