Culture

木を高層階に住まわせる ボスコ・ヴェルティカーレ

三メートルのバルコニー、方角ごとの樹種、中央管理が支えるミラノの垂直の森

ミラノの二本の塔では、木が窓辺の飾りではなく、建物の輪郭そのものをつくっている。ボスコ・ヴェルティカーレの樹冠は、約100種の植物を方角と高さに合わせて配置した結果だ。高層階の植栽槽で木を生かすには、景観より先に、根、風、水、手入れの仕組みが必要になる。

ミラノのボスコ・ヴェルティカーレ。二本の高層棟のバルコニーから多様な樹木が枝を伸ばす
Jeronimo Alcala / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

ミラノのポルタ・ヌオーヴァで、二本の塔はバルコニーの外側へ樹冠を押し出している。幹の太さも葉の密度も異なり、階ごとに輪郭を変えながら、建物の縁をほどいて見せる。ボスコ・ヴェルティカーレでは、このばらつきまで含めて植物が建築の一部になっている。

三メートルのバルコニーを、根の場所にする

設計を手がけたステファノ・ボエリ・アルキテッティによれば、二棟には約800本の樹木、4,500本の低木、15,000本の多年草とグラウンドカバーが入り、種類はおよそ100に及ぶ。それぞれが床面から約三メートル張り出すバルコニーの植栽槽に根を置き、枝葉を空中へ伸ばしている。

植栽槽は、あとから置かれた大鉢ではない。TEKNEは、コンクリートの槽がバルコニーの欄干を兼ねる構造だと説明する。土と水と成長する根の重さを受け、排水を通し、幹が風を受ける位置まで含めて、建築側が最初から木の居場所をつくった。

植える前には、建築家と植物学者が約三年をかけて樹種を調べ、計画に合う個体を育てた。完成した木を高層階へ運ぶだけではなく、限られた根域と強い風を前提に、苗床の段階から建物へ移る準備を進めた。写真で樹冠が不揃いに見えるのは、個体ごとの生長が今も塔の輪郭を変えているからだ。

樹種は方角と階ごとに変わる

AIPHのケーススタディは、樹種を選ぶ際に、根の性質、寒さと風、日照、水、都市の汚染、病害虫、乾燥、移植への耐性まで検討したと記す。見栄えのよい木を並べるのではなく、植栽槽の中で生き続けられるかを条件ごとにふるい分けた。

南側にはオリーブや果樹が置かれ、北側には冬の日差しを室内へ通す落葉樹が選ばれた。さらに湿度と風は階によって変わるため、低層と上層を同じ条件として扱わず、植物の組み合わせを変える。約100種という多様さは、塔に並ぶ小さな環境差へ応答した結果だ。

高層部では、根が土に収まるだけでは足りない。TEKNEは、強風時の幹を支えるため、植栽槽の内部に鋼製ケージを組み、必要な木にはケーブルを用いる仕組みを示している。枝葉が自由に揺れる景観の背後で、根鉢と幹の安全を支える構造が働いている。

庭師と給水が、一つの森を維持する

植物部分の管理は各住戸に任されていない。AIPHによれば、植栽は中央で管理され、居住者が樹種や手入れの方針を個別に変えることはできない。隣り合うバルコニーを一つの生態的な外壁として保つには、私有の鉢植えとは異なる共通の管理が必要になる。

庭師は三〜四か月ごとにバルコニーへ入り、年に一度はロープを使う樹木管理の専門家が塔の外側から剪定と点検を行う。水は点滴灌水で送り、湿度センサーと各面の日照条件に合わせて量を調整する。AIPHの記録では、灌水には再生した地下水が使われる。

ボスコ・ヴェルティカーレが建築へ持ち込んだのは、完成した緑の表面ではない。根が太り、枝が伸び、葉が落ち、剪定と給水を繰り返す植物の時間そのものだ。木を高層階に住まわせるには、眺めだけでなく、その後も生き続ける仕組みを建物の中へ残す必要がある。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. Bosco Verticale / Vertical Forest — Stefano Boeri Architetti
  2. Bosco Verticale, Milan — Green City Case Study — AIPH / Green City
  3. Bosco Verticale — TEKNE
  4. File:Il Bosco Verticale Milano Px (137734459).jpeg — Wikimedia Commons / Jeronimo Alcala