ビカクシダ・リドレイの巣葉は、幹に薄く貼りつくのではない。深い畝をつくりながら重なり、内側に閉じた空間を残す。その外から、胞子葉だけが上へ向かって分かれる。
葉が二つの仕事を分ける
Platycerium ridleyiは、タイ半島からマレー半島、スマトラ、ボルネオに自生する着生シダだ。Kewは、湿潤な熱帯の樹上を主な生育場所としている。土に根を下ろす鉢植えとは、最初から身体の置き方が違う。
この種には二種類の葉がある。シンガポール国立公園局によると、波打つ不稔の巣葉は互いに重なって閉じた空間をつくり、硬い胞子葉は繰り返し分岐しながら上へ伸びる。丸い盾と鹿角を並べるだけでは、この立体感を言い表せない。
巣葉の内側に、部屋ができる
巣葉の表面には、盛り上がる脈と沈む面が交互に走る。葉が古い葉へ重なると、根茎のまわりに厚みのある殻ができる。野生では、その空間がアリの巣として使われることがある。
掲載写真は、2015年にマレーシア・サラワクの樹上で撮影された同種だ。板付けした室内株の見本ではない。幹を囲む巣葉と、周囲へ伸びる胞子葉が一つの株でどう重なるかを確かめられる。
胞子葉は、下がらず上へ伸びる
国立公園局は、上向きの胞子葉を持つビカクシダとして本種を区別している。胞子葉は革質で、分岐の根元近くに胞子嚢をつける葉片が現れる。正面だけでなく、横から高さを見ると特徴が読みやすい。
若い株では、巣葉の畝も胞子葉の分岐も完成形ではない。小さな株を成株の写真だけで判定せず、新しい葉がどちらの役割へ育っているかを一枚ずつ追うと、姿の変化が見えてくる。
「熱帯だから濡らす」を外す
栽培者の相談では、高湿度のケースへ移したあと巣葉と胞子葉が傷み、用土が濡れすぎたのか、植え付けで根を乱したのかと問う例がある。答えを湿度の数字一つへ縮めず、板の裏まで乾くか、葉の内側へ空気が動くかを分けて確かめたい。
巣葉が閉じた空間をつくる形は、保水だけを増やせばよいという意味ではない。置き場所、板の材質、根の量で乾き方は変わる。固定の日数で水を足さず、前回の水分が残る場所と、新しい葉の硬さを同じ日に記録する。
買う前に、形と来歴を分ける
専門家による栽培記録は、実生や組織培養の株が流通する一方、野生採集株も市場へ入ってきたと注意を促す。幅広、細葉、矮性といった呼び名を見る前に、種名と増殖方法、輸入後の発根状態を販売者へ確かめることが、形を選ぶ入口になる。
リドレイの魅力は、鹿角のような葉だけでは終わらない。幹を囲む巣葉、その内側の空間、上へ分かれる胞子葉までが一つの構造だ。正面の輪郭を見たあと、横へ回り、葉の間に残る深さを見たい。
