Culture

一枝に百の名札が揺れる 国芳《百種接分菊》

10月2日開幕、国立国会図書館「冒険する園芸」で江戸から現代へ

赤、白、黄、紫。一本の幹から異なる花形の菊が広がり、その一輪ずつに細い名札が下がる。国立国会図書館の企画展示は、この国芳の錦絵から、植物を集め、名づけ、記録してきた時間を開く。

一本の幹に色と花形の異なる多数の菊と名札が広がり、人々が見物する国芳の三枚続錦絵
一勇斎国芳《百種接分菊》(1845年)/国立国会図書館デジタルコレクション

赤、白、黄、紫。一本の幹から異なる花形の菊が広がり、その一輪ずつに細い名札が下がる。1845年に刊行された一勇斎国芳《百種接分菊》は、花を眺める人々の視線まで三枚続の画面に集めた。

花より先に、名札が目に入る

菊の枝を埋めるのは、丸く重なる花弁、細く放射する花弁、色の濃淡だけではない。短冊状の名札が一輪ごとの差を言葉へ変え、見る人は枝全体と個々の花を行き来する。品種を見分けて集める楽しみが、画面の構造になっている。

国立国会図書館は、この錦絵を企画展示「冒険する園芸 ―庭先から世界へ」の第1章に置く。展示の中心は植物そのものだけでなく、人が改良し、希少な種を探し、名前と図で残してきた情熱だ。

江戸の鉢は、記録とともに増えていく

第1章「江戸の園芸――大名から庶民まで」には、1681年の『花壇綱目』、1832年の『小おもと名寄』も並ぶ。万年青の姿と名をまとめた資料は、葉の斑や形を見分ける眼差しが、鉢の外へ記録として広がったことを伝える。

今、鉢のラベルを残し、入手日や植え替えを記す行為も、同じ線上にある。名前は珍しさを競う札ではなく、その株について確かな情報へ戻るための手がかりになる。古い園芸資料を見る時間は、自分の棚をどう記録するかにもつながる。

山を越えた植物は、図譜にとどまる

第2章は西洋のプラントハンティングへ進む。1855年のJoseph Dalton Hookerらによる『Illustrations of Himalayan plants』、1852年の『Curtis’s Botanical Magazine』。まだ見ぬ植物を運び、描き、印刷した時代が、色と形の記録として残る。

第3章では、1890年の『日本園芸会雑誌』、1913年の『仙人掌図説』、1940年代の『日本産ツバキの図』へ続く。菊や万年青からサボテン、ツバキまで、集める対象が変わっても、違いを見つけて共有する方法は更新されてきた。

前期と後期で、ページが変わる

東京会場では200点を超える選定資料から、会期を二期に分けて各期約150点を展示する。後期展示は10月19日から。紙の資料は一度にすべてを開けないからこそ、どのページが選ばれたかにも展示の編集が現れる。

会期は10月2日から31日まで、国立国会図書館東京本館の新館1階展示室で開催される。時間は10時から19時、土曜は17時まで。日曜、祝日、10月21日は休館で、入場は無料。満18歳未満や利用者登録のない人も観覧できる。

一輪の違いを、持ち帰る

《百種接分菊》の前では、まず一枝全体の華やかさを受け取り、それから一輪ずつ名札を追いたい。色や花形の違いを言葉にし、気になった名を残す。その小さな動作が、江戸の見物から今日のコレクションへ、園芸の冒険をつないでいく。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. 令和8年度企画展示「冒険する園芸 ―庭先から世界へ」 — 国立国会図書館
  2. 百種接分菊 — 国立国会図書館デジタルコレクション
  3. File: NDL-DC 1307605 — Utagawa Kuniyoshi — 百種接分菊 — Wikimedia Commons
  4. 国立国会図書館ウェブサイトからのコンテンツの転載 — 国立国会図書館
  5. 西洋のプラントハンティング、明治から現代まで 国立国会図書館「冒険する園芸 ―庭先から世界へ」 — みんなの趣味の園芸