庭園と大使館だけに植えられていた一株が、初めて一般の庭へ向かう。群馬県の中之条ガーデンズは、新品種のバラ「マリエタ」の苗を9月26日から数量限定で販売する。育種家・河合伸志が生み、駐日ブルガリア共和国大使マリエタ・アラバジエヴァが名を与えたバラだ。
一輪の名は、二つの庭を結ぶ
中之条ガーデンズと駐日ブルガリア共和国大使館の交流は、2022年に大使館のバラが友好のしるしとして庭園へ贈られたことから始まった。花文化と温泉文化を持つ土地同士のつながりが、一本の植栽から少しずつ育っていった。
2025年、庭園は園内にブルガリア友好花壇を整備した。ローズガーデンの植栽を手がける河合伸志が新作を寄贈し、大使が自らの名を冠して「マリエタ」と命名。植樹された株は中之条ガーデンズと大使館の二か所で育てられてきた。
庭園の株から、家庭の苗へ
9月26日に始まる秋のローズガーデンフェアで、「マリエタ」の苗は初めて一般販売される。公式発表は数量限定としているが、価格や販売数、取り置き方法は示していない。訪問を考える場合は、販売状況を中之条ガーデンズの最新案内で確かめたい。
新品種の魅力を、写真から花色や香りだけで決めつけることはできない。今回確かめられるのは、作出者、命名の経緯、二つの植栽先、そして苗が初めて庭の外へ渡るという事実だ。名前の背景を知ると、一鉢は外交の記念品ではなく、育て継がれる植物になる。
標高480メートルで始まる秋バラ
中之条ガーデンズは標高480メートルにあり、主催者は冷涼な気候のため、秋バラが平地より約一か月早く見頃を迎えると説明する。昼夜の寒暖差が花色を濃くするという。開花は天候で動くため、訪問前には当日の花の状態を確認するのが確実だ。
ローズガーデンには約400種、1,000株が植えられ、七つのセクションに分かれる。「マリエタ」だけを一輪で見るのではなく、異なる花形や株の姿の中に置くと、新品種がどんな表情を持つのかを比べやすい。
園内の秋はバラだけではない。ナチュラルガーデンではミューレンベルギアの穂が赤い霧のように広がり、直径40メートルのスパイラルガーデンにはルドベキアの黄とアゲラタムの紫が現れる。細い穂、丸い花、密に重なる小花が、ローズガーデンとは別の尺度で季節を見せる。
9月26日から10月18日まで
秋のローズガーデンフェアは9月26日から10月18日まで。開園は9時から17時、入園は16時30分まで。入園料は花の見頃に応じた変動制で、大人1,200〜1,800円、小・中学生600〜900円が想定されている。
10月10日には「中之条 花マルシェ 〜秋のお茶会〜」が開かれ、食香バラの茶の試飲、花苗、ドライフラワー、植物雑貨など13店が集まる。翌11日まで、ナチュラルガーデンに植えられている宿根草を中心とした苗の直売も予定されている。
大使の名を受けた一株は、庭園と大使館で咲く記念から、家庭で季節を重ねる苗へ変わる。「マリエタ」の初販売は、新しいバラが名を持ち、植えられ、次の育て手へ渡るまでを同じ秋に見届けられる機会になる。
