水面に浮く緑の粒は、直径1ミリにも満たない。それでも花をつける被子植物だ。9月17日に福井で始まる日本育種学会第150回講演会では、Wolffia globosaの花成誘導と画像フェノタイピングが発表題目に並ぶ。
0.4ミリの植物を 見失わない
発表は17日10時45分から。長岡技術科学大学の鍬田健人と高原美規が、「Wolffia globosaの育種に向けた花成誘導手法および画像フェノタイピング技術の開発」を報告する。公開プログラムは題目と発表者を示しており、結果の数値や手法の詳細までは公表していない。
欧州食品安全機関の資料によると、この種の葉状体は卵形で0.4〜0.8ミリ。葉と茎を分けて数える姿ではなく、緑色の小さな葉状体が植物体になる。写真では、水滴の中央に一粒だけ置かれた下面が、丸い緑の面として見える。
掲載写真は2015年に撮影された栽培個体で、学会発表の試料ではない。花も写っていない。肉眼で水面の点に見える植物を拡大し、その大きさと形を確かめるための一枚だ。
ふだんは 花より先に増える
Wolffia globosaは、葉状体の基部にある袋状の部分から新しい葉状体を出す。欧州食品安全機関は、ウキクサ類ではこの無性的な出芽による繁殖が中心で、花を介した有性生殖は時折起こると説明する。
国際農林水産業研究センターは、日当たりのよい静かな小川や池に浮かび、ほかの小さな水生植物と混じる姿を記録している。タイやラオスでは市場に並び、料理にも使われる。同じ植物が、野外の水面、食卓、研究室で別の顔を見せる。
花をそろえることから 育種が始まる
出芽で増える個体を比べるだけなら、花を待たなくても数を増やせる。けれど異なる親を交配し、次の世代を調べるには、花をつける時期をそろえて観察できることが重要になる。今回の題目が花成誘導を最初に置く理由は、そこにある。
画像フェノタイピングは、写真から形や生長の違いを記録する方法だ。1ミリ未満の葉状体を繰り返し測る場面では、目視だけに頼らず、同じ基準で変化を追う助けになる。ただし今回の発表がどの形質を測り、どこまで自動化したかは、公開プログラムだけでは分からない。
講演会には、イネの根の角度、メロンの硬さ、コチョウランの液胞内pHなど、目に見える形質と遺伝情報を結ぶ発表も並ぶ。その中でWolffia globosaは、測定対象そのものが水面の粒ほど小さい。
小さな花の前で 止まって見る
第150回講演会は17日と18日、福井県立大学永平寺キャンパスで開かれる。初日の短い発表枠に置かれたのは、見つけにくい花を咲かせ、見失いやすい植物体を画像で追う試みだ。
水滴の中の緑の粒は、花がなくても次の個体をつくれる。だからこそ、その小さな植物を育種へ進める入口は、いつ咲いたかを確かめ、一粒ずつの違いを残すところから始まる。
