果茶水 KACHASUIの一号店は、9月6日に東京・富ヶ谷で開いた。代々木公園駅から徒歩約3分、代々木八幡駅から約4分の場所にあるテイクアウト中心の店だ。開店の案内には、果実を注文後に仕上げるCRUSH series、茶葉を火入れして香りを立たせるTEA LATTE series、果実と自然素材を組み合わせるBALANCE series、ストレートで茶を楽しむTEA seriesが並ぶ。何を飲むかはもちろん、どの瞬間を持ち帰りたいかで選び方が変わる。
果実を 目の前の時間へ戻す
CRUSH seriesでは、注文を受けてから果実を仕上げる。店が挙げる秋の限定メニューには、巨峰を丸ごと用いる「巨峰 soda」と、ライチ、マスカット、レモン、ライムにジャスミン茶を合わせる「マスカット Jasmine Tea」がある。果実の色だけを先に眺めるのではなく、手が加わった直後の香りや氷の音まで含めて受け取る設計だ。シロップと氷の量を選べるため、甘さや冷たさを自分の歩く速度へ寄せられる。
巨峰、マスカット、レモン、ライムは同じ果実という言葉に収まるが、果皮の香り、酸味、果肉の見え方は異なる。そこへジャスミン茶を加える一杯は、果実だけの鮮やかさではなく、花のような香りを持つ茶の余白をつくる。写真の断面や色を選ぶ理由にしてもよいが、原材料や仕上がりは日によって変わり得る。注文前には店頭の案内を確かめたい。
茶葉の香りに 暮らしの温度をつける
TEA LATTE seriesは、茶葉を火入れし、100%生乳で抽出すると店が説明する。黒豆茶、抹茶、金木犀ウーロン茶、ジャスミン茶と、名前の中には種子、葉、花の香りが並ぶ。けれど、ここで大切なのは植物の名前を効能へ置き換えないことだ。店頭の一杯は、香り、温度、ミルクの厚みを楽しむためのもの。体質やアレルギーが気になる場合は、原材料表示を確認し、自分に合うものを選びたい。
茶葉を火に入れる手つきは、果実を仕上げる動きとは別の時間をつくる。前者は香りを立たせ、後者は果実の輪郭を近くへ引き寄せる。カウンターの向こうで行われる二つの操作を知ると、同じ冷たい飲み物でも、急いで飲むためだけのものではなくなる。仕事へ向かう前なら香りの立つ茶、代々木公園を歩いたあとなら果実の明るい色というように、その日の身体と街の光に合わせて選び分けられる。
散歩の途中に 一杯の居場所をつくる
店は富ヶ谷一丁目、代々木Y'sパークビルの一階にあり、営業時間は9時から19時30分、年中無休と案内されている。代々木公園へ向かう道や、奥渋谷を歩く時間の中では、目的地を増やしすぎないことも心地よい。一杯を持って遠くまで歩くより、近くの角で立ち止まり、果実の色が変わらないうちに味わう。そんな短い寄り道なら、テイクアウトの軽さと店で行われる手仕事の両方が残る。営業時間や提供内容は変更される場合があるため、出発前には公式の最新案内を確認したい。
果実と茶葉は、どちらも日常に近い植物だ。けれど、切る、つぶす、火を入れる、ミルクで抽出するという手順を通ると、ただの材料ではなくなる。果茶水の一杯にあるのは、派手な色を急いで消費するための仕掛けではない。歩きながら聞いた音や、口元へ来る直前の香りを、今日の時間へひとつ置いて帰るための余白だ。
