夏の終わりに水やりを減らす、と聞くと、月が替わる日に回数を切り替えたくなる。けれど鉢が乾く速さは、植物の種類と大きさだけでなく、光、温度、湿度、風、用土、鉢の材質にも左右される。Royal Horticultural Societyと米国の大学Extensionも、一定の曜日ではなく、用土や鉢の状態を確かめてから水を与える考え方を案内している。
9月1日ではなく 同じ鉢の変化を比べる
見るべきなのは、別々の鉢を横に並べた一回の数字ではない。同じ鉢を、同じ場所で、同じ時間帯に繰り返し見ることだ。日が短くなり室温が下がれば乾きが遅くなることはあるが、窓から入る光や冷房、鉢の大きさが違えば変化の幅も違う。カレンダーは観察を始める合図にはなっても、水やりの合図そのものにはならない。
最初の一週間は、水やりの回数を先に決めず、日付、時刻、土の表示、温湿度、鉢の重さを一行に残す。葉が日中に少し下がっても夜に戻るのか、乾いた翌朝にも張りが失われたままなのかを添えると、数字と株の様子が結びつく。記録は精密さより、同じ条件で続けられる短さを選ぶ。
水が必要なときは鉢土全体へ十分に与え、鉢底から出た余分な水を切る。受け皿にたまった水はそのままにしない。少量を毎日足すより、乾き具合を確かめ、与えるときと待つときを分ける。サボテンや多肉植物と熱帯性の観葉植物では適した乾き方が異なるため、三つの測定値だけで一律の基準をつくらない。
土の水分は 一か所の色だけで決めない
シンワ測定の「土壌水分チェッカー M 79019」は、土へ差し込むと水分の範囲を赤、緑、青のLEDで示す。電池式で、数値を読み込むより素早く乾湿の変化を確かめたいときに使いやすい。ただし説明書にも、作物に適した水分を確認すること、鉢では数か所を測ることが記されている。色は植物ごとの正解ではなく、その場所の水分帯を示す目印だ。
鉢の縁だけが乾き、中央には水分が残ることもある。茎のすぐそばを避け、根を傷つけない位置へ静かに差し、複数の場所を比べる。硬い土へ無理に押し込まず、使用後は先端の土を落として保管する。指で表土を触る、葉の張りを見る、鉢を持つといった観察と組み合わせて初めて、色に意味が生まれる。
温湿度計は 鉢の近くの空気を記録する
タニタのデジタル温湿度計「TT-585」は、温度、湿度、時刻に加え、過去の最高・最低値を表示できる。朝に見た数字だけでなく、留守の間に部屋がどこまで暑く乾いたかを知る手がかりになる。鉢の近くで記録しても、直射日光や加湿器の風、水がかかる場所は避ける。人に快適とされる表示を、そのまま植物の適温・適湿と読み替えないことも大切だ。
温湿度は、水やりを命令する数字ではなく、前日との差を説明する背景になる。湿度が高く、光が弱く、鉢の重さもあまり減っていないなら、表面だけを見て急いで水を足さずにすむ。反対に暑く乾いた日が続いても、土の内部に水分が残っていれば待てる。置き場所を変えた日は、その日から別の条件として記録を始める。
鉢の重さは 水やり直後からの差を残す
A&Dのデジタルホームスケール「UH-3201-W」は、最大3kgまで量れる家庭用のはかりだ。小さな鉢なら、水やり後に十分排水した時点の重さを記録し、翌日以降の差を比べられる。鉢カバーや受け皿を使う場合は、毎回同じ組み合わせで量る。違う鉢との重さ比べではなく、一つの鉢から水が抜けていく経過を見る。
本体は防塵・防水ではない。濡れた鉢を直接載せず、清潔で乾いた薄いトレーを間に置き、水平で安定した場所で使う。3kgを超える鉢や、底面が大きく不安定な鉢には使わない。重さが減ったという事実だけでは、水が必要か、どこまで乾かす植物かは決まらない。土の水分と部屋の変化を合わせ、最後はその植物の性質に戻る。
三つの道具の値が揃わなくても、故障とは限らない。表土は乾いていても鉢の中心に水が残り、部屋が乾燥していても重いままのことがある。そこで急がず、測る場所と時間をそろえ、翌日の差を見る。水やりを減らす日は暦が決めるのではなく、同じ鉢を見続けた記録の中から、少しずつ現れてくる。
