鏡のような池の向こうに、低い建物と樹木の列が続く。冒頭の写真は2018年5月に撮影されたHendrie Parkの記録で、今回の公演当日や会場設営を写したものではない。それでも、庭が一つの平面ではなく、水、植栽、建築、空の層でできていることはよく分かる。音を迎える場所として考えると、ステージだけではなく、演奏が届く距離と視線の抜け方まで庭の一部になる。
客席になるのは、植物園で最も大きな栽培庭園
会場のHendrie Parkは、Royal Botanical Gardensが管理する栽培庭園のうち最大のエリアだ。ローズガーデン、香りをテーマにしたScented Garden、オンタリオの在来植物を植生ごとに見せるHelen M. Kippax Garden、薬用植物を扱うHealing Gardenなど、役割の異なる庭が連なる。コンサートは植物園の通常開園後に行われる特別イベントで、公式案内ではRBG Centreからトンネルを通って入場する。
現地8月20日は18時30分開場、20時からDJ Better Love、21時15分からBADBADNOTGOODの予定。一般入場は55カナダドルに税とサービス料が加わり、事前購入が必要と案内されている。一般席には椅子が用意されないため、折りたたみ椅子やブランケットを持参する形式だ。芝生に自分の居場所をつくる所作が、通常のホール公演との最初の違いになる。
開演前、バラと彫刻のあいだを歩く
8月の庭を見る手がかりは、満開という一語ではなく、次の花へ移る途中にある。Hendrie Parkのローズガーデンは6月から9月が見頃の目安だが、公式の開花案内は、バラの次の開花を待つあいだクロコスミア、トウワタの仲間、エキナセア、フロックス、ロシアンセージなどの宿根草が色を担うと伝えている。バラだけを主役にせず、開花期の違う植物を組み合わせる設計が、夏の景色をつないでいる。
さらに園内では9月20日まで、彫刻家Ken Kelleherによる「ANCHORBALL: A Curious Art Journey」が開催中だ。高さ最大約12フィートの彫刻18点が庭に置かれ、拡張現実によるデジタル層も加えられている。公演案内も早めに来場して作品を巡ることを勧める。植物、彫刻、音楽を別々の目的に分けず、歩く順番そのものを夜のプログラムにしている。
BADBADNOTGOODの輪郭を、屋外へほどく
トロントを拠点とするBADBADNOTGOODは、Chester Hansen、Alex Sowinski、Leland Whittyの三人によるグループとして公式ページに記されている。音楽はソウル・ジャズ、オルタナティブ・ヒップホップ、実験的な電子音楽の境界を行き来する。2024年の『Mid Spiral』では複数の奏者を迎えた録音を三つの章として発表し、固定した型より、演奏の流れが変わっていく過程を前へ出した。
その音を庭で聴く意味は、植物を曲の説明に使うことではない。ホールでは壁と天井が音の輪郭を決めるが、ここでは樹木の高さ、芝生の広さ、暮れていく明るさ、人が選んだ座る位置が、同じ演奏の受け取り方を分ける。植物園は装飾ではなく、演奏と観客の距離を組み立てる空間になる。
庭園公演を選ぶなら、開演前の一時間を見る
現地へ向かえる人は、チケットの最新状況、天候、持ち込み条件を主催者の案内で再確認したい。写真撮影や録音、飲食物、椅子の大きさには会場規則がある。通常の昼間入園と特別イベントの入場条件も同じではない。日時はすべてオンタリオ州の現地時刻であり、日本から確認する場合は時差にも注意が必要だ。
行けない夜にも、持ち帰れる見方がある。次に庭や公園で音楽を聴くとき、ステージに近い場所だけを探さず、葉越しに空が見える位置、水面が音の外側に入る位置、歩いてきた道を振り返れる位置を選んでみる。良い庭園公演は、植物を背景へ退かせない。音楽が始まる前から、どこで聴くかを考えさせる。
