Culture

ピアノのある夜に、散らない盆栽。福岡中洲へ

音楽が満ちるホテルラウンジに、ADABANAのプリザーブド盆栽を置く

赤褐色の枝が大きくうねり、細かな葉が雲のように重なる。これは生きた盆栽の展示風景ではなく、8月1日にザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲で始まる企画の一枚だ。箏とフルート、ピアノ、DJの音が行き交うラウンジへ、手入れを終えた植物からつくるADABANAの作品が入る。植物の終わりを保存した造形は、音のある夜にどう見えるだろう。

淡い青と灰色の背景にCANVAS SUMMER JAMとADABANAの文字が置かれ、右側に赤褐色のプリザーブド盆栽が大きく枝を伸ばす公式告知ビジュアル
画像提供:ザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲/ADABANA(告知ビジュアル)

公開された告知ビジュアルでは、淡い青と灰色の面を背景に、赤褐色の盆栽が画面の右側へ大きく枝を伸ばしている。幹は節ごとに曲がり、葉のかたまりは低い雲のように重なる。黒い「CANVAS SUMMER JAM」の文字と、赤いADABANAの印。実際の会場写真ではないが、音楽イベントの軽やかさと、枯れた植物を留める造形を一枚の中でぶつけた構図だ。

三菱地所ホテルズ&リゾーツが7月28日に公開した案内によると、8月1日の「CANVAS SUMMER JAM by OTOJIRO × ADABANA POPUP」では、キャンバスラウンジでライブとDJを実施する。同時に始まるADABANAの展示は8月16日まで続き、2階のラウンジだけでなく3階のBAR KOMOREBIにも作品が置かれる予定だ。一夜の演奏と約二週間の展示。速く消えていく音と、形を残そうとする植物が同じ建物に入る。

生きた緑とは、別の役割を持つ

ADABANAは自らを、植物の最期を素材に新しい風景をつくるプリザーブド盆栽ブランドと説明している。乾燥・保存処理を施した植物や、自然に枯れた素材を使い、幹のねじれ、葉の色あせ、枝の傾きを一点物の造形として組み直す。公式案内では水やりを必要とせず、直射日光、湿気、強い衝撃を避けるよう伝えている。

ここで大切なのは、プリザーブド盆栽を生きた盆栽の便利な代用品として見ないことだ。芽吹きも、葉の展開も、季節ごとの手入れもない。その代わり、育ってきた枝が最後に見せた曲線や、色を失う途中の葉を、彫刻に近い距離で見ることができる。生きて変わる植物と、変化を抑えて残す植物。部屋に置いたときの向き合い方は同じではない。

告知画像の盆栽も、実際の展示作品や樹種を示すものとは限らない。会場で見たいのは名前の珍しさより、枝の先端がどこで止まり、空白をどう囲み、鉢との重さをどう釣り合わせているかだろう。枯れた色を弱さとして隠さず、輪郭として見せる。その選択に、ADABANAの仕事が表れる。

無音をうたう作品に、演奏が重なる

8月1日の音楽は20時から23時まで。箏奏者IORIとフルート奏者・紅葉によるデュオ「琴笛」、ボーカリスト兼ピアニストの舞音、福岡を拠点に活動するDJのS.SHOWTAが出演予定とされる。ホテルの公式案内によれば、ラウンジにはスタインウェイ&サンズのグランドピアノがあり、この夜も演奏に使われる。入場は無料だが、ワンドリンクの注文が必要になる。

作品と楽曲が一対一で対応する、あるいは演奏者が盆栽を主題にするとは案内されていない。だからこそ、関係を作りすぎずに見たい。箏の線、フルートの息、ピアノの余韻、DJがつなぐ拍。その間で、枝は動かない。音に合わせて植物を説明するのではなく、耳が開いているときに枝の間の空白まで見えるかを確かめる夜になる。

ライブが終わった後も、展示は8月16日まで残る。演奏日に訪れれば、人と音が行き交うラウンジの中で作品を見られる。別の日なら、2階と3階を移動しながら、照明や家具との距離を落ち着いて比べられるだろう。同じ作品でも、背景の音量と人の動きが変われば、枝の密度や影の見え方は変わる。

森を思わせるホテルで、植物の終わりを見る

会場となるホテルは、九州の自然を空間の軸にしている。公式サイトでは、博多川に面するキャンバスラウンジ、九州の渓谷をイメージした大浴場、照葉樹林の森を思わせる屋上庭園を紹介している。館内には、季節とともに変わる生きた木々の場所と、保存処理によって姿を留める作品の場所が並ぶことになる。

屋上庭園の葉は光や雨を受け、枝を伸ばす。ADABANAの葉は成長せず、室内の直射日光や湿気を避けて置かれる。その対比は、どちらが自然に近いかを競うためではない。育て続ける植物と、役目を終えたあとも形を残す植物。ホテルを上へ歩く短い動線の中で、植物に向ける二つの視線を行き来できる。

一夜だけで終わらない見方

「CANVAS SUMMER JAM by OTOJIRO × ADABANA POPUP」は、福岡市博多区中洲5丁目6番20号のザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲で開催される。ライブとDJは8月1日20時から23時、ADABANAの展示は8月1日から16日まで。内容は変更される場合があるため、訪問前にはホテルの公式案内を確認したい。中洲川端駅3番出口から徒歩約2分と案内されている。

植物と過ごすことは、いつも成長を見守ることだけではない。葉が開かなくなった後も、幹に残る曲がりや、枝がつくった空間を見届ける方法がある。音はその場で消え、盆栽は形を留める。反対の性質を持つ二つが並ぶ夜は、残るものだけでなく、消えていくものへも視線を向けさせる。

参考リンク・出典

この記事の調査・執筆で参照した情報です。各発信元でも原文をご確認いただけます。

  1. 日本の伝統文化×音楽が織りなす、一夜限りのイベント開催/ザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲 — 三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社
  2. CANVAS SUMMER JAM by OTOJIRO × ADABANA POPUP — ザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲
  3. ザ ロイヤルパーク キャンバス 福岡中洲 — 三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社
  4. 徒花について — ADABANA
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