告知に添えられた公式素材には、ガラス瓶に収めた粉末状の素材、乾いた枝葉、小さな計量器が一つのテーブルに並ぶ。完成品を見せる売り場ではなく、素材がまだ名前と役割を待っている作業台だ。今回のサマースクールで面白いのは、植物を眺める回と、ものを作る回を遠く離さず、同じ三日間の選択肢として置いたことにある。
会場は、旧杉並第四小学校を活用した科学体験施設「未来をつくる杉並サイエンスラボ IMAGINUS」。日程は8月14日から16日、全体の開催時間は10時から17時30分までで、対象は小学生。各ワークショップの日時、対象学年、参加費は公式特設ページで案内され、予約はプチバトー公式LINEから受け付ける。受付は7月24日10時に始まった。
香りと花を、手のひらの素材へ戻す
植物に直接触れる回は二つある。「植物を使って虫除けのお香をつくろう」では、植物の香りをたどりながら天然成分を使ったお香を作り、高学年は型づくりにも進む。ここでRareDexが見たいのは、完成した香りの強さより、葉や樹皮のような素材が砕かれ、混ぜられ、形を与えられる途中だ。植物は鉢の姿を離れても、手触りや粒の違いを残している。
もう一つは「ロスフラワー®︎ちょうちん」。規格外などの理由で廃棄される花の押し花を使い、ちょうちんを仕立てる。花が育つ過程や廃棄の背景、農家の仕事を学ぶ構成で、高学年はタッセル作りにも取り組む。花を美しいまま保存するだけではない。茎の長さや花弁の形が流通の基準から外れたあと、光を通す面として選び直せることを、手仕事で確かめる。
なお、記事はお香の虫よけ効果を評価したり、家庭での使用法を勧めたりするものではない。各回の材料、安全上の注意、持ち帰り後の扱いは主催者と講師の案内を確認したい。RareDexが記録するのは、植物由来の素材へ近づく学びの設計である。
自然を見る目を、服の線へ持ち込む
公益財団法人日本自然保護協会が講師を務める生きもの観察会では、生物多様性の座学と東京都心でのフィールドワークを行う。何種類見つけたかを競うより、足元の葉、虫がとまる場所、日なたと日陰の差に気づく目を持ち帰るための回だ。身近な自然を見直すという目的は、会場の外へ出たあとに本番を迎える。
その隣に、ファッションデザイナー体験が置かれる。低学年は夏の冒険に出かけるキャラクターの服を、雑誌の切り抜きや布で作るインスピレーションボードから考える。高学年はプロのデザイン工程を学び、探検家の服を組み立てる。自然観察と服作りは別々の講座だが、見る、選ぶ、組み合わせるという動作は共通している。
植物の線をそのまま花柄へ写す必要はない。葉の重なりからポケットの位置を思いつくかもしれないし、外を歩くなら風を通す形や動きやすさが気になるかもしれない。主催者が掲げる今年の言葉は「自然とのつながり」と「Freedom to Move(動き回れる自由)」。服を飾りではなく、世界を観察する身体の道具として考える入口になる。
二年分の手仕事が、この夏につながる
この企画は一度きりではない。プチバトーの公式記録によれば、2024年は代官山のCIRTYで、花を使う制作や小さなプランターでニンジンを育てる回を実施した。2025年は会場をIMAGINUSへ移し、種から種へつなぐプランター、植物繊維から紙を作る回、セミやDNA、写真の講座へ広がった。昨年は全8種類・38回、延べ423人、実参加273人の子どもが参加したと報告されている。
2026年は、香りと押し花に加えて、服、写真、ジャーナリングが同じ時間割へ入った。園芸教室でも、職業体験だけでもない。植物を育てること、素材を使うこと、自分の視点を紙に残すことが、夏の一つの編集面に並んでいる。子ども向けだからといって、答えを一つに絞らないところがいい。
親が選ぶべきなのは、いちばん役に立ちそうな回ではなく、その子が最近よく手を止めるものかもしれない。葉の裏を見たがるのか、布を重ねるのか、光の仕組みを追うのか。三日間の教室は、好奇心を分類する場ではなく、まだ名前のない興味を一つ持ち帰る場所として読める。
